山口昭男句集「木簡」を読みました。

山口昭男句集「木簡」を読みました。
     2017/11/16
     十河智

 「秋草」主宰、山口昭男さんの第三句集「木簡」を読んだ。「秋草」立ち上げ後7年間の句であるという。、「ゆう」の編集長であった方なので、この句集以前の句には接していた。田中裕明没後、「秋草」を主宰され、ご活躍のことは、お聞きすることもあった。この句集を出され、とある俳句賞の候補になるほど評判がよいと、今の麦笛句会の仲間に聞き、読みたくなり、その方からお借りして読んだ。
 爽波、裕明の流れを汲む懐かしい感じを受ける句が並ぶ。言葉が優しく語りかけ、ほっと落ち着かせてくれる。日常の中のふと気づく詩情に読者も共感する。

好きな25句を挙げる。挙げてみると、口調も表記も本当にやさしい。

秋草へいよいよ強き月の照り
黄落よ立方体のクルトン
ペン軸をくはへ裕明忌を修す
てつぺんにあきて天道虫おりる
水鳥のうしろ姿のあたらしく
日記には葵祭と書きしのみ
手毬の子汚れることを嫌ひけり
木簡の青といふ文字夏来たる
秋の蚊のまともに水のくらさかな
さからはぬ子規の妹烏瓜
地下鉄に野焼のにほひ残りけり
薬の日さらりとソースかけにけり
竹林は風住むところ星祭
墨の香をまとひし女クリスマス
人遠き母のたつきや葱の花
くりかへすささやきに似て水を打つ
歩くたび風におされし千草かな
消炭を撒きたる空の青さかな
緑陰やオーボエの音つかめさう
ばつたりと妻にあふ日のねこじやらし
鮎落ちてピアノは音を追ひたがる
狐火を見る赤い服青い服
田の水のふかきみどりや三尺寝
新聞でゆるくくるみぬ萩の花
一本の線より破れゆく熟柿として