【2018年10月21日】

【2018年10月21日】
       2018/10/28
       十河智



〔どちらも行きたい重なる日〕

11月の第三週、日曜日に、寝屋川市薬剤師会の「薬と健康展」と麦笛句会が重なってしまった。いつもであれば、どちらかを諦めるのだが、今年は事情が違った。
 「薬と健康展」は、寝屋川市総合センター、保健福祉センターを毎年会場にしていたのだが、先の地震で、総合センターの方が3、4階部分に大変な被害を受けて、いまは全体を閉館、使えなくなり、急遽会場を寝屋川市駅前のアルカスホールに変更することになった。いつもと勝手が違う会場なので、設営だけでもお手伝いしたいと思った。
 また、麦笛句会には、選者でもあり、「田中裕明の思い出」ふらんす堂、の著者、四ッ谷龍さんが、今回、東京から来られるという。どうしても、欠席したくなかった。裕明さんのお話が聞けるやも知れず、四ッ谷さんご自身のお人柄に接することもできる機会なのだ。また、このご本の読後感想なども、ブログに発表させていただいたので、印字したものをお持ちしたかったこともあった。ただ、句会の方も今回、会場が変更になっていて、所要時間がよくわからない。
 一応のこととして、薬と健康展の方は、設営と午前だけの参加ということ、句会へは、事前投句をして、遅れるが絶対に行くということを、伝えておいた。



寝屋川市駅前、アルカスホール〕

 前日、土曜日にもも、「薬と健康展」の準備があり、午後から2時間ほど、会場に集まったが、急場凌ぎの為、使える場所が狭く、動線の確保される配置に苦労していた。
 当日は8時半集合、9時よりイベント開場。普段、私は、宵っ張りなので、目覚まし時計の出番である。起床後すぐに、朝食無しで、バスで行く。駅近くの会場だったので、早朝のミスタードーナツに行った。こういう場所は時間帯によって、雰囲気が違う。書類やノートをもっている男の人が多かった。何かの試験の準備のようであった。コーヒーとフレンチクルーラーで朝ごはんがわり。
 イベント開始前に、配置図通りに、会場設営。手際よかった。
 講演は、カスピ海ヨーグルトを日本に持ち込んだ先生、イベント進行中の為、私達は聴くことができないのだが。
 簡単な自分でできる健康維持のための測定コーナー。血圧、ストレス度、骨密度。
 子供薬局に参加しての職業体験と、幼児の遊びコーナー。
 お薬相談コーナー。
 保健所から、タバコやアルコール、薬物の害の広報、パンフレットの配布コーナー。
 市から、健康保険、介護保険の衆知活動のコーナー。
 毎年テーマに沿った川柳も募集している。二百句近くの応募があったそうだ。 その授賞式に、学校薬剤師としての担当校の先生が生徒を連れてきておられた。希望者が応募してくれて、二人、入選だったそうだ。関心をもってくれて嬉しいとご挨拶して、血圧測定コーナーにいると、隣のストレス度の測定中の人から声がかかる。古い知人だが、駅前なので、来てみたという。長い間に、白髪白髭の老人になっていた。お互いを笑いあっていると、ストレス度が上がったようで、静かにするように、注意されていた。
 80歳前のOB二人と、半現役の私で並ぶ写真をとられて、お弁当をいただいて、11時半に会場を離れた。
 
秋早朝カフェは何かの試験前
猫舌に急ぐコーヒー秋の水
赤き実や石のベンチに時過ごし
爽やかや設営手際よく進む
馬肥ゆる秋健康をテーマとし
変容の白髭白髪穴惑ひ
ストレス度上がるや秋の声元気
秋うらら古老と言はれ三人で
切り換へて句会へ急ぐ秋の駅  



島本町ふれあいセンター〕

句会へ急いだ。
 前に句会で借りた本と、帰りに読む本、イベントもあったので、荷物がパンパンである。いつもとは違うので地図もすぐ出せるようにした。
 枚方市駅からは、JR高槻市駅行きのバス、JRで島本町と乗り継いで、13時には、教えられた最寄り駅に着いた。
 駅は2階が改札で、ちょっと周りを見渡してみると、注目の小野薬品の「ONO 」の文字と、いまから向かう「ふれあいセンター」の文字、この二つが、山側では大きい建物のようであった。近いようで、下に降りると、全くどの方向にあるのか、見えない。
 朝の立ち詰めが堪えていたので、タクシーと思っていたが、昼はほとんど人が行き来しない駅のようだ。15分待ったが、バスもタクシーも来ない。
 句会に遅れそうになり、地元のタクシー会社の電話番号を聞くつもりで電話する。まりさんが、歩くと上り坂がきつい、迎えに来てくれると言う。昼間はバスも便数が少ないらしい。仕方なく甘えてしまう。
 それから5分程で、着いた。りっぱな建物だった。山の斜面にある建物は、駐車場側が、地階となっていて、エレベーターの階が分かりにくかった。

四 

〔麦笛句会〕

 会場はとっても広くて明るい部屋、円形にテーブルが並んでいて、メンバーが席題に取り組んでいた。1時30分投句のところを1時50分締め切りになっていて、私も席題に参加できたのだが、どうもお騒がせと迷惑を掛けたようだ。
 四ッ谷さん以外にも、お二人。「いぶき」を立ち上げられた主宰のお一人である今井豊さんと「船団の会」の方が参加されていた。
 いつもと違う、何かが感じられた。手順は同じなのだが、清記用紙に並ぶ句の感じ、文字の感じ、選句される句の傾向、講評も。
 四ッ谷さんも、今井さんも、切り口鋭く、取り合わせとか季語の選択の可否まで言って、厳しかったが、新鮮な感じがした。いい刺激を貰えた。ただ、共感や好き嫌いで感覚的に俳句に接する私なので、選句の傾向は全く違っていた。ここで教わったことが、私の中で俳句に対する新感覚として、熟成するのを待とうと思う。
 残念ながらゲストの方々に私の句は採っていただけなかった。慌てて書いた筈の、席題句が3句、句友の選に入った。
 句会が終わり、四ッ谷さんに、「読後感想としては、自分の思いが走りすぎていて、恥ずかしいのですが。」と、印字したブログをお渡しした。「読ませて貰いました。」と返ってきて、驚いたが、ブログに書くということは、それくらいの覚悟が必要と改めて、認識させられた。龍さんの書く交流や裕明論が、私自身の感情をくすぐり、つい書きすぎて私の、「田中裕明の思い出」になってしまっていたのだが。そこが恥ずかしかったのだが、受け取ってもらった。
 句会のお友だちは、本にサインをしてもらったと、お茶の時に、見せてくれた。持ってきたらよかったと、私を含む何人かが悔しがった。心に残る、差し出した人に向けて書かれた言葉だと、その場の皆が感じていた。



〔帰路〕 
 
 句会の後、同じセンター内に喫茶室で、ゲストとお茶だけということで、歓談した。新幹線の時間があって、ほんの一瞬であったが、楽しかった。皆が一時間以上かかる帰路を持つので、いつもは、すぐに散会する句会なのだ。
 少し暮れ泥んでくる頃、帰りは下りだし、ゆっくり山と町の雰囲気を味わおうかなと歩き始めた。句友達には、速度が違うので置いていってと頼むが、付き合ってくれていた。
 後ろから、車でまりさんが来て、阪急水無瀬駅まで送ってくれた。やはりありがたかった。
 阪急水無瀬駅の方が、賑やかであることを知った。皆の話では、タクシーはここには来るとも。今度があるかどうかはわからないが、ここから句会場にいく方がいいなと記憶した。
 高槻からは神戸方面の人達と別れて、いつもと同じコースで帰った。
 寝屋川市駅前はもう8時近く、すっかり暗くなっていた。
 ほろ酔い加減の男三人組がすれ違う。
「十河さん、今頃までどこで遊んどったん?」もう一人が、「俺らもやんか。」
 よくよく見ると、薬剤師会の役員達、一大イベントが無事終わり、内輪で、打ち上げをやっていたようだ。
「俳句会、超有名な先生にあってきたんよ。」
 それぞれのバス停にバイバイしながら、向かっていった。

キョロキョロとまたうろうろと秋澄めり
Ono・Suntry 島本町に柿たはは
島本の島が席題柿実る
よく通る声して若し秋扇
身に入むや裕明住みし島本町
釣瓶落とし阪急水無瀬駅煌と
マネキンのひつそり見せる秋の服
ほろ酔ひの男三人十三夜