「子どもおもしろ歳時記」理論社 金井真紀 文・絵 斉田仁 選句・監修

「子どもおもしろ歳時記」理論社
 金井真紀 文・絵
 斉田仁 選句・監修
       2018/01/09
       十河智

フェイスブックで、辻村麻乃さん、井伊辰也さんが紹介されたこの本を、孫にと思い、年末に注文していたが、意外と、手に入れるのに時間がかかった。やっと今日届いた。

面白い。私の好きな俳人ばかり例句に揚がっている。ことに一茶は、この人の句集かと思うほど多い。芭蕉や蕪村、他の人に較べて、子どもに分かりやすい題材なのか、多作ゆえに季語がうまく例句に当てはまるのか、とにかく多い。かなり突っ込んで、季語について説明しているし、芸術性の高い句も、名句も、有名人や評判の句も、そして子どもの句も、バランスよく取り上げられている。各年代の子どもが興味を持続できるよう工夫がなされているように思う。表記はルビつき、原句の通り。暦の新旧のずれや二十四節気などもコラムで上手に説明していて、オォーと思った。手元にしばらく置いておこう。今別れてきたところで、春まで孫には会わないし。

例句で気に入りの句をあげておこう。

*私の先生達 

亀鳴くや男は無口なるべしと 田中裕明

入学の子のなにもかも釘に吊る 森賀まり

金星を沈めて丘は竹の秋 五島高資

教師みな声を嗄して麦の秋 岩田由美

はしゃぐ子らメロンの息のおしゃべりして 辻村麻乃

*一茶

草餅や片手は犬を撫でながら
やせ蛙負けるな一茶これにあり
角落ちてはづかしげなり山の鹿
大の字に寝て涼しさよ淋しさよ
涼しさにぶらぶら下がる毛虫かな
かわほりや仁王の腕にぶらさがり
一夜酒隣の子迄来たりけり
露の玉つまんで見たるわらべ哉
夕月や涼みかてらの墓参
茸狩のから手で戻る騒ぎかな
里の子や蚯蚓の唄に笛を吹く
大根引き大根で道を教へけり
正月を寝てしまひけり山の家
猫の子がちょいと押へる落葉かな
        小林一茶

*有名人

朝寝して寝返りうてば昼寝かな 渥美清

*好きな俳人、気になる俳句

風光る草という草おいしそう
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 
青嵐神社があったので拝む 池田澄子

灯火親し英語話せる火星人
自転車に昔の住所柿若葉 小川軽州

三日月がメソメソといる米の飯 金子兜太

しぐるるや駅に西口東口 安住敦

初夢のなかをどんなに走ったやら 飯島晴子

朝よりも鳴かぬカナリア風邪ごもり
寒雀ぱらぱら中に違ふ鳥 阿部みどり女

何もかも知つてをるなり竃猫 富安風生

数へ日の夕富士ぽつんと力あり 桜井博道

そら豆や死後に途方もない未来 長谷川裕

雛あられ両手にうけてこぼしけり
冴ゆる夜のこころの底にふるるもの 久保田万太郎

*FB友達
うずくまる僕は科学者山眠る 井伊辰也
豆まきの鬼やる父は帰宅せよ 津野利行
英単語あんしょう釣瓶落としかな 北島和奘

*FB友達の友達
黄昏が金木犀に触れてをり
駆けてきて転んで泣いて七五三
マスクして目玉おほきくなりにけり 小林苑を

*子どもの句
たんぽぽの種は小さな冒険家 小六
テスト前殻から出ないかたつむり 中三
プールからスカイツリーにタッチする 小二
シャーベット初めて海を見た五歳 中二
いわし雲漁が成功したみたい 小四
すず虫と地蔵もおばけもカーニバル 小六
霜柱芝生の楽器できあがり 中二
雪だるまこの子の親はこの私 小五
マウンドの日暮れは遠し原爆忌 高二

子ども達は、カタカナことばが、骨の髄まで、日本語として、染み付いているように思われた。