2017~2018、年末年始の顛末

2017~2018、年末年始の顛末
        2018/01/09
        十河智

 この年末年始は、娘夫婦が静岡で終の住処を建てて、引っ越しが終わったので、その家を見に行くことにして、年末は寝屋川、正月は静岡、元旦に移動、と決めていた。

1 インフルエンザ
 27日に子供の予定が終わってから、夜にかかる時間に着くという話に、子供と母親だけの道中、母親の夜の運転を、心配には感じていた。それがイヴに娘から上の子がインフルエンザにかかったと電話があった。五日間は動けないし、自分も調子が悪いので、移っているかも知れず、下も様子を見て見ないと予定が立たない状況と言う。大阪での年末は無理かもしれないと言う。私たちの方はどちらにしても、元旦に静岡に向かう、ということにして、療養中だと思い、その後連絡は控えていた。
 27日に上の孫から電話してきた。か細い声で、まだ元気ではなかった。
「おばあちゃん、僕もう熱下がったよ。37度5分。明日行くね。」「明日?お母さんはインフルエンザ治ったの?」「お母さんはインフルエンザでなかったんだ。」母親と代わらせると、その通りで、予定はキャンセルしたから、一日遅れで、朝から出ると言う。お昼過ぎに着くということ、子供が病後でおとなしいことは、運転中の心配を減らしてくれる。

インフルエンザの子か細く言いぬ今日行けぬ
熱の子と数え日焦りつつ過ごす
三ヶ日蜜柑産地ことなる甘さかな

2 大阪
 28日、午後3時頃、到着。早速にピンポンの争奪戦。元気に驚く。
 盆正月の帰省は、泊まりはうちとなっているが、娘が友達と会う予定やら、婿の家に行くので、年末しかいないとなると、ほぼ毎日出掛ける。
 二人の孫は、確かにやり易くなっている。二日間だけ預かって、本屋にも連れて行ったが、ちゃんと読みたい本は上の子が検索機などを使い、この店にはなかった、と言ってくる。TSUTAYA枚方駅前店では、子供たちが本選びするのを待っている間に年賀状の一筆加筆が仕上がり、帰りに投函できた。
 三才違いの二人、下の子にも上の子にも、長幼の自覚がなく、喧嘩になることが多い。今彼らはスター・ウォーズの刀のように飛び出して光る刀のおもちゃに夢中なので、見ている方が怖い。引き離すのに必死で体力を使う。雪見障子に一点刀が突いて小さな穴が開く。それに親に持ってくるなと言われたドローンタイプのヘリコプターも荷物から出てくる。上手に操れるところを見せたくて、お花を生けてFBに載せる舞台の床の間の明かり取りの障子を二ヶ所、プロペラが2~3センチメートル切り裂いた。あいにくのその度にうちの障子に桜の形や四角の切り貼りが入る。
 婿の家、高槻でも障子に当たり、破いたそうで、「お祖父ちゃんが障子ならまだいい、襖は絶対ダメ。」と言ったという。「障子はすぐ張り直せるけど、襖は、張替に四万円かかるんだって。」と言う。向こうでも、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんが、何とか説得力のある止めさせ方はないかと、苦労している様子がよくわかる。私は、「それは本物の襖だから。でも寝屋川では、襖は板に張ってて破れないけど、障子は張替が大変、これ以上は止めて。」ちょうどニュースで、ドローンの起こす事故の話を見たところだったので、人のいる場所での危険性を強調して、何とか止めさせようとした。その場は止めても、暫くすると、また、幽かだが、確かにプロペラの回る音がし始める。案外耳に障る。刀を振り回し、鞘から長く抜け出す音と青や赤に光る棒、これは、男の子二人の興奮と喧嘩に必ず行き着く。親に叱られる。どちらかが泣き出す。クリスマスプレゼントがこうして騒動を作り出すとは、サンタさんも罪作りだ。いい子にしていますからと約束してもらったもののはずだから。
 と、二日もすると、どれも動かなくなる。この頃のおもちゃは、電池で動く。エネルギーを使い果たすのだ。都合のいいことに、うちにある予備の電池では、ヘリコプターにあわなかった。電池の入った箱を捜させ、諦めさせた。刀の方は復活したが、だいぶ落ち着いた気がした。
 大晦日、正月に家を留守にするので、何も支度をしないと決めていた。そこへ子供たちが、注連縄を作って持って来てくれた。母親と習いに行って、作ったらしい。いつものように、玄関に飾ると、急に新年を迎える気分になる。晦日そばは多く作り過ぎない様、きっちり二人分。淋しい年越しであった。遅くに孫達も帰ってきた。「今日は、向こうのお祖母ちゃんの骨折でリハビリ中のお見舞いに行ってきた。百歳で病人だけど元気いっぱいだった。退院しても、家に帰って、一人で暮らすといっている。」婿によると、ヘルパーさんが定期的に訪問してくれて、近所に叔父さんもいるので、一人で暮らして行けるのだそうである。しっかりと頭脳明晰な、見習いたい年の取り方の方である。

ドローンのプロペラ障子切りにけり
竹トンボ風の子冬の天へキリリ
寒き日に熱エネルギー満つ兄弟(あにおとうと)
去年今年喧嘩兄弟たる所以

3 元旦
 雑煮用の材料は細大根と金時人参、香川の実家で頼む餅屋の餡餅、これもまた実家近くの味噌屋の白味噌、この四つを荷物に入れる。紅白の終り頃からゆく年くる年を見て、年が明ける。おめでとうと言ってから寝る。この辺はいつも通り。今年は、FB上にも新年のご挨拶を挙げてから寝た。
 元旦、娘夫婦が高槻に年始の挨拶に行って、頃合いを見計らって、私たちも出発した。途中、SAで待ち合わせて、静岡へ。元旦に移動は渋滞しないと見込んだのだが、計算通りにはならず、何ヵ所か渋滞があった。伊勢への初詣かな、と思ったが、同じことを考える人もいたのかもしれない。満月の一日前の月が夕暮れにぼぉーと大きく出てきていた。夜の食事はSAでお寿司を買っていく。何事も二日からということにしていた。着いた時間には日が暮れていた。

お年玉喧嘩はせぬと誓はせて
正月や雲ぽつかりと陽に平和
渋滞の鈴鹿峠や冬夕月
娘の家へ雑煮材料携へて

4 二日
 二日、香川方式、餡餅雑煮、持ってきた材料に、コンビニで豆腐と鶏肉は生を売っていないので、何かないかと探すと、サラダチキンという塊があった。葱は残念ながらいつもある刻みネギも見当たらず、諦めたが、ふと、この頃のテレビ番組、コンビニ食材で料理、とかなんとかを思い出す。笑えて来る。十年も経つと婿も餡餅白味噌というようになったが、娘は一人白餅なのだ。用意の餡餅五個は、弟に送ってもらったもの。雑煮用はある程度しっかりと餅でくるんでいないと餡が蕩け出して具合が悪い。皆が鶏肉、どうしたと聞くので答えると、驚いている。愉しい。
 静岡浅間神社が近いので、初詣。地元民がたくさんお詣りしていて、交通規制も行われていた。静岡駅から参拝の人が引きも切らず、神楽の奉納があったり、屋台も並んでいて、ほんとに賑かで、和やかであった。和服姿も多かった。
 初詣のあと新しい家の前で、記念の写真を撮った。私達の寝屋川の家のそんな頃を思い出す。45年経ち、この間、最小限の補修をした。あと何年住むだろうという家、そして真新しい木の香る家、つい較べて、感慨に更ける。ここにも、注連飾りを玄関に飾っていた。娘が作ったものだそうで、しっかりと可愛らしくできていた。

木の香る新しき家注連飾り
婿建てし家一回り二日かな
静岡にゐたるいつもの餡餅雑煮
正月二日遅まきながら言祝ぎぬ
せんげんさん市民挙つて初詣
神楽舞ふ巫女の健気さあどけなさ
冬満月携帯電話感度良し

5 子育ての日々
 家の中はまだ雑然、その上に子供たちが散らかす。仕方ない。喧嘩も片付けも何時かはできるようになる。毎日の生活習慣を守らせ、日課をこなさせるのも、大変そう。親の親は苦労をただ見ているしかない。寝る前には何とかなっているので安堵する。
 長逗留の理由は8日の下の子の音楽発表会の晴れ姿を見んがためであった。その間に、孫を「スター・ウォーズ」に連れていき、娘のコート選びに付き合い、収納が広くなり、新築祝いは来客用の寝具にしたので、それも選ばせた。ウールの毛布が、高価になっていてちょっと驚いたが、奮発してあげた。買い物をして、家事も少し手伝い、それであっという間に日が過ぎた。

さつそくにひなたぼつこのひとすみを
正月のスター・ウォーズに光る剣
落とさぬやうに汚さぬやうに鍋囲む
スケートに子供二人で四年生
保護者なくスケート場に入れてくれぬ

6 たまに会う友人
 静岡に来ると二年に一度くらい連絡して会う大学時代の友人がいる。今回は牧之原市から車で来てくれ、食事を共にした。聞けば、お姉さまは静岡で、月に何度か来ているという。あとで会うというので、少し気持ちの負担は減った。問わず語りに、日常を語る。娘が静岡に落ち着くこと、彼女の方も娘さんが結婚したと言う話。お姉さまの20才の老衰著しい猫のことや、自分の飼っている猫たちのこと。他愛ない話が嬉しい。ごく自然に、「さようなら、またね。」で別れる。

初売の静岡駅や友と会ふ
アレルギー年ごと蟹の季節かな
小寒や老衰の猫見舞ふてふ

7 音楽
 県民ミュージカルというのも見に行った。その会場は静岡芸術劇場というホール、県民から募った出演者が大人から子供まで。なかなかいい出来だと思った。
 そして最後がヤマハの発表会である。静岡市民文化会館が会場である。出演する孫は練習を親の言うほど満足にはやっていない、それでも、見劣りしない程度に歌い踊っていて、娘も感動したという。帰りは新年に入って初めてかなり強い雨が降った。そんなこんなで、日を過ごし、苦労を忘れつつ、子育ては終わっていくのだろう。
 静岡県民、静岡市民は立派な音楽ホールを利用できる。この事は、特筆に値する。羨ましいと思った。

娘の家に竜宮の日々はや七日
堂々と舞台に立ちぬ冬苺
発表会衣装の上のコートかな
寒の雨明日はどの道帰ろうか