世を継いでゆく

世を継いでゆく
     2017/6/18
     十河智

孫たちはキャンプ中らしい。Facebookで知る。
孫たちは、自然の中ではしゃぎ、笑っている。その前と後ろに、見えない両親がいる。一安心する。つい一週間前には、勝手に泣き出して、泣き止まない長男を、叱りすぎたという娘からの電話を一時間近く聞いてやった。聞いてやるだけしかできない。その後がほんの少し気にかかっていた。不思議なもので、娘が心配なのだ、基本的には。
私の母が、「男の子はわからん。」と言っていたことを、また思い出した。私が泣き虫だった幼い頃の母の困惑のことを思い出した。娘にせっかく習わせたピアノを練習させようとかなり強引だった自分のことも。
こうやって、何となく時間が経ち、世代が引き継がれるのだろう。

叱つては悔いる親あり蜘蛛の糸
豆腐屋も客も息子よ冷奴  

《娘と行った菖蒲園で買った苗は今もうちの小さな池で花を咲かせている。四十年前のことだ。》

端正を愛づその紫の花菖蒲
睡蓮やたつた二輪がからうじて