伊豆修善寺の旅 五月

伊豆修善寺の旅 五月
         2017/5/14・15
         十河 智
伊豆箱根鉄道各駅夏の花
縁側にお茶する夫婦青葉風

木の駅舎夏の燕の二家族
修善寺は旧き湯治場木下闇
夏の蝶階段多き日枝神社
階段を諦めてゐる夏帽子
緑陰をスロープ抜けて修禅寺
緑さす白雲木といふ名札
修善寺に夏のみかんと蕨売り
夏鴬頼家の墓辺りかも
湯に足を休めて夏の昼下り
鄙びたる青葉の道にカフェhonohono
簗を置く川平成の赤き橋
漱石の療養所跡草茂る
廃屋とおぼしき旅館シャツを干す
修善寺の川風涼し七千歩
北極熊剥製元気夏の宿
旅の荷を置き床の間の夏の花
夏座敷古稀の前後の酒量かな
年ごとに静かな議論夏の宵
夏草や戦争をせぬ国日本
踊り子の女優談義や伊豆の夏
疲れ良し夏暁に良き寝覚め

夏の霧借り傘をして周遊す
松杉の巨木に高く芍薬
行く所々に薔薇(さうび)香り咲く
色褪せて終りに匂ふ藤の花
赤き薔薇の前のベンチに忘れ物
友垣に沿ひ悪路行く夏野かな
いつの間に皆手に持つやソフトクリーム
テディベア住む虹の郷カナダ村
夏燕メイプルツリーの大樹かな
ミニ鉄道都忘れの花の中
バスを待つ青葉の雨に打たれつつ
修善寺のバス乗り継ぎて青時雨

百年の新井屋旅館夏料理
三島には世界遺産も梅花藻も
二度は無き三島逍遙冷コーヒー
静岡のホームの別れ夏の夕
花樫のもくもくもくと山膨る
木曽川の満々として青葉風
夏の川煌めく日中スポーツを