紅葉かつ散る

紅葉かつ散る
   京都、一乗寺修学院辺りにて
    1995年11月
             十河 智
一 黃落
  黃落や曲がり角つひ見過ごしぬ
  落ち葉積む白河通り轢きて良し
  延々と朽ち葉の並木厭ひつつ

二 紅葉かつ散る
  気に入りは銘々にあり野の紅葉
  苔青く襲の色に散る紅葉
  名刹を避けて雑木の紅葉かな
  一乗寺巡れば紅葉かつ散りぬ
  山の端に京見渡せば薄紅葉
  借景を想ひつ野より見る離宮

三 空(くう)を突く
  桐の実や寺門の前に空(くう)を突く
  桐一葉その巨きさを確信す
  花片をひとつ遣はし侘助
  冬椿﨟長けてゐて葉の強き
  紅葉見し眼に真青なる空の色
  朝顔ヘブンリーブルーと名を知りぬ

四 鶺鴒
  鶺鴒やコンクリート護岸上にゐる
  鶺鴒の二三歩行くや瀬は速し
  護岸工事良きや悪しきや鶺鴒に