熊本・大分大地震2016

熊本・大分大地震2016
             十河 智

 2016年4月14日夜から翌翌朝未明にかけて、熊本県に大地震が起きた。私は、いつものごとく、スマホフェイスブックを見ていたが、次次と地震速報が続いた。寝屋川では、何も感じず、大地震という実感は薄かった。そして、もう一度、大きく揺れて、あとの発表ではそれが本震であったという。夜が明けて、熊本市内がテレビに映し出されると、確かに被害がある様だったが、まだこの大地震の被害の全容は明らかではなかった。震源地は、阿蘇山の麓で、神戸の時と同じく直下型の活断層のずれが原因の地震であった。震源近くの被害は甚大で、活断層に沿って、道路が割れ、山が崩れ、建物が潰されている事が、その日のうちにわかってきた。専門家ではない私は、しかし、その日、それまでに起きた被害が最大で、これ以上進むものではないだろうと、案外早く収束するのではと安易な予測を持っていた。フェイスブックのタイムラインに、ヤフーのニュースに、また、テレビの空からのレポートに、少しずつ緊迫した状況が報告され始めたが、被害が神戸の時の様に、身近に及ばなかった事もあり、地震の揺れを直に感じていなかったせいもあって、被害に遭われた現地の方々の、長引く余震によって今も味わっておられる恐怖感を、その時は想像すらしていなかった。
 あれから、一週間経った。地震直後から、活断層のひずみは連鎖して拡がり、西日本一帯で、大小の余震が記録されている。最初の震源近くでは、倒壊家屋の下敷きになられた方々が亡くなられ、その後、余震が続く中で、エコノミークラス症候群や、持病の悪化などで、かなり亡くなられた方が出たようである。雨が強く降っている。この雨が、被災状況をもっと悪くするに違いなく、心配でいたたまれない。
 思えば、何度、大地震を経験した事だろう。この30年くらいのうちに。若い頃は、「日本は火山国、地震国」と言われていても、話に聞く関東大震災くらいで、火山の噴火も今ほど大規模で、頻繁には起こらなかったと思う。小松左京の「日本沈没」という小説は、絵空事に過ぎなかった。それが、現実味を帯びてきて、今では、ほとんどの日本人が、身を以て経験している。火山灰を浴びた記憶や、大地震の揺れの中にいたときの恐怖の記憶を、あの時とおんなじと、語り始める。災害に立ち向かう気力はまだ萎えてはいない。この地震からも確かな復興があると信じている。しかし、集中豪雨や台風の被害も含めると、何と自然災害の多い国、日本、かと思う。次は、言われている様に、東南海大地震か、富士山噴火かと、つい大きな不安に襲われている。今、被災されている方々の事を一番に考えるべきなのに。

春の夜の夢の中にて起きしなゐ
活断層春野に突如現れぬ
入学の阿蘇の学舎に無惨かな
由布院に南阿蘇にも春のなゐ
数百回震りて止まざり春驟雨
花過ぎに記憶の底の大地震
春愁やつい次はどこ次はいつ
肥後豊後また伊予になゐ春深し
なゐ震れどなほ大阿蘇に芽吹くなり
水の春水清く湧く処なり