富士見会

富士見会

     十河 智
     二〇〇二年一一月一六・一七日

冠雪ややさしき富士に内なる火
朝晴れし富士に恥じらふ石蕗の花
冬霞頂淡く富士は高し
放牧の牛の背富士の大枯野
はつきりと牛の白黒枯るる中
裾野引く富士見る窓や冬日
番犬は規律正しく冬館
宿の子の年数ふなり冬の桐
一番の富士見処と息白し
ベゴニアに埋もれ臨死の夢に似る
不思議なる幸福国際花園かな
梟(フクラウ)の獲物獲る眼に見据えられ
寒燈や娘の転機向かへつつ
冬の雲ありやなしやと気遣はれ
寒鯉や宿富士宮一ならむ