月桂冠   中書島、そして祇園へ

  中書島、そして祇園

         十河 智
         平成十三年十一月二十三日

冬枯れや岸行く人のスニーカー
十一月十石舟に揺られけり
恋心忘れ果てにし枇杷の花
やはらかき波にうねりの小春かな
黄落や絵筆持つ人話す人
夜鷹そば大川交す中書島
酒の粕月桂冠に歴史あり
草紅葉沿ひて枚方琵琶湖まで
枯れ蔓や高瀬川には高瀬舟
寺田屋の障子ぱらぱら時雨れけり
志士歩くかと思ひ馳せ寒き朝
花街の名残恐々寒椿
橋渡るセーターの人舟に答ふ
紅葉伽藍前に見ずして東福寺
伽藍図の前に一人で暮れ易し
冬の灯や祇園小路の奥の奥        
幕末の祇園伏見や燗の酒