ほたる

ほたる                   
      十河 智

蛍追ふ小さき背中や帯の赤
肩車ゆらりゆらりと蛍かな
ひいふうみい蛍数へて覚へけり
ほうほうとうちは掲げて駈け抜けて
墓標消え蛍の夜となりにけり
蛍火をひとつ掬ひてまた放つ
叢の深き処に蛍の灯
皆濡らす壺庭にあり蛍籠
暗闇を待たうと思ふ蛍籠
昼蛍夢より覚めて現実に
蛍見に阿波の秘境に入りにけり
蛍や平家の隠れ住みし里
川岸を結界として蛍かな
水煙る蛍合戦絵巻かな
蛍舞ふ源氏の君か中将か
ほうたるを見ずに暮らしはありにけり
蛍売りあるかなきかの光かな
ほうたるの飲む甘き水知らぬ子よ
蛍来い教はりたがる子に歌ふ
我が町の蛍住む池名を問はず