崖のすすき   佐渡へ

 崖のすすき   
      佐渡
       十河 智
              平成一四年九月二三日

フルムーン旅の夜汽車に揺れながら
朝冷えの夜汽車の窓や糸魚川
港町直江津秋の朝である
いざ佐渡へ台風近きと聞きながら
秋彼岸海の国道ありにけり
うそ寒や我らの発す大阪弁
味噌を湯で溶かすみそ汁朝寒く
まこと遙か遠き都や秋あはれ
蕎麦白し佐渡に都の貴人達
観月や都人には仮の宿
草の花風に怯える渚あり
宵闇に黒々佐渡は岩ばかり
黄金の稲の原なり段々に
ガードレール稲架けと化し佐渡巡る
秋の日の浦をゆつくり猫が行く
豊秋や佐渡に江戸期の五重塔
あさがほのあを板塀の脇に咲く
老婆ただ一人にあひぬ刈田道
コスモスや北に美人が多きとか
佐渡に来て朱鷺に逢はずや芒原
朱鷺すでに十羽超えゐて霧の中
粛として朱鷺の気色や秋の雨
秋高し天翔る朱鷺想ふなり
秋冷の佐渡に朱鷺あり愁眉かな
雁渡る向かうの佐渡のまた向かう
崖のススキめしひの母の嘆きかな
十六夜やこの世の果ての賽河原
去ぬ燕佐渡に別れの物語
日本海米よきところ今年酒










朝冷えの夜汽車の窓や糸魚川
港町直江津秋の朝である
いざ佐渡へ台風近きと聞きながら
味噌を湯で溶かすみそ汁朝寒く
まこと遙か遠き都や秋あはれ
蕎麦白し佐渡に都の貴人達
観月や都人には仮の宿
宵闇に黒々佐渡は岩ばかり
黄金の稲の原なり段々に
ガードレールみな稲架けと化し佐渡巡る
豊秋や佐渡に江戸期の五重塔
佐渡に来て朱鷺に逢はずや奥深く
朱鷺すでに十羽超えゐて執ありき
粛として朱鷺の気色を眺めけり
気高きや天翔る朱鷺想ふなり
佐渡土産朱鷺の愁眉を準へて
雁渡向ふの佐渡のまた向ふ
崖のススキめしひし母の嘆きかな
去ぬ燕佐渡に別れの物語
日本海米よきところの今年酒