赤穂

 10月の末に赤穂温泉に1泊の旅をした。私たち以前の世代には、赤穂は、特別の思い入れある土地であるが、今は、仇討ちが話題になることも少なく、タクシードライバーは、観光客の少なさを嘆いていた。名高い赤穂ではあるが、私たちも実はそこに経つのは初めてである。
 平和で整った暮らしやすそうな町の佇まいは、仇討ちというかなり野蛮な殺伐とした事件とかけ離れていた。思えば、事件は江戸ですべてが展開しており、ここは、塩という基幹産業がある、豊かな土地であり、それほど土地の庶民の生活は壊れなかったのかもしれない。昭和まで続いた塩田の跡には、新興住宅地が造成され、塩を商う古い風格のある店構えを残している。赤穂城趾、大石神社、その周辺の武家屋敷からは、実直に暮らしていた浅野家家臣たちの日常が見えてくるようであった。大石神社の参道に並ぶ四七士像は、故郷赤穂にゆっくり憩う若者たちのようであった。
 
     若き人義士を知らずや秋の雲
     秋気澄む大石神社赤穂城
     爽やかや赤穂は塩のものばかり