富士宮市…富士山・焼そば・将棋の駒

[書くことが多く、後に回していました。あまり季節がずれないうちに。]その3

富士宮市…富士山・焼そば・将棋の駒
       2019/01/10
       十河智

去年のことになりましたが、孫二人の誕生日が前後にあり、十一月に十日間ほど娘のところへ行きました。まだ寒くなっていなかったと思います。いま小寒の凍るような寒さの中では、思い出すこともできないのですが、それなりに寒い日もありました。
 ゆっくりと一日掛けて移動の後、近江八幡彦根での寄り道もあり、静岡へは、夕方到着しました。運転を変わると言いつつ、最後まで主人に一人運転させてしまいました。車で行きたいけど、少し疲れも出るようになったらしく、よく変われと言われますが、私には自信がなくて、大体こうなるのです。
 引っ越して一年になるので、何回か来たこともあり、一方通行の多い周辺道路も間違わずに、娘の家に着くことができました。
 静岡は本当に故郷の高松と雰囲気が似ていて、溶け込める街の佇まいがあります。
 二階から孫が顔を出し、新しい家を住みこなしているようです。少しばかりの植栽も大きくなっているようで、枯らさないで、夏は越したようです。
 玄関近くにあった木に惹かれました。。背の低い濃い緑の細く尖った葉で、黄色の丸い実がたわわでした。南天にしては葉が違うなと思うので、検索してみました。スマホは便利です。時間を掛けると、大体正体がわかります。細葉ヒイラギナンテン、黄色い実もあると書いてありました。綺麗な黄色の玉にしばらく見入っていました。
 荷物を下ろし、近くのタイムズ、一日五百円、の駐車場に置きに行きます。少し遠い婿の勤め先では長逗留になると、たまに車で出掛けたいときに不便なのです。タイムズも会員証を持っていて、活用すればもっと安くなるのでしょうが、面倒で、あまり使っていません。いつもコインひとつですむので。
 ちょうどその頃、一度寒波が襲いました。静岡に来てから、若い家族の家はは少し足りないくらいの暖房ですし、今風なのか天井が高く、容積が大きいので、効率も悪い気がします。二日間ほどはぐったりしていました。
 床暖房の暖かさにうとうとしていると、孫たちは、時間制限があるもののテレビでゲームをやっています。それぞれにデータがあるようです。テレビの中のことなのか、兄弟同士でなのか、それさえ判別不能。訳の分からないいさかいをしています。
 ゲームを止めた後、意外にも、お祖父ちゃんに将棋を教えてと寄ってきます。二人とも。最近将棋を覚え始めたようで、前に買ってやっていた動く方向を書いた矢印のある駒を使って練習しているようでした。主人は喜んでいます。このまま興味が続いて、対戦できるようになってくれたらと思ったことでしょう。

 (実はこのお正月に会ったときは、もう将棋のシの字も出ませんでした。子供の興味は移ろいやすく、もう次のブームが来ていました。)

 自分がいつも携帯している雑誌「将棋世界」の付録の問題をやらせたり、ハンディ付きで相手をしてやっていました。私は、キッチンに立って、鰈を煮ながら、お祖父ちゃんに挑む孫たちを見ていました。結構一生懸命にやっている様子。次の日は休日、朝も昼も夜も、ちょこっとやって来ては三手詰めをやったり、対戦したり、えぇーっというほど、将棋、将棋でした。ちょうど藤井聡太七段が話題で、学校で将棋が流行り出したらしいのです。
 主人が富士宮は将棋の駒で有名、おもちゃの駒では打ちにくいと、買ってやりたそうに言い出しました。娘がインターネットで調べると富士宮市では将棋の町としてどの文房具店でも将棋の駒を売っているとの情報を得て、翌日は一家で、行楽がてら富士宮まで行くことにしました。
 途中、反抗期にもあるらしく、孫達がすねる場面もありました。富士宮焼そばを食べようと、私の希望で入り掛けた店が気に入らなかったようなのです。こどもは突然に不機嫌になり、車から降りようとしません。一人は寝起きだったためらしく、直ぐについてきましたが、もう一人は少し放っておいて、母親が迎えにいきました。その店のメニューに、たこ焼きもあって、自分で焼けるのが気に入ったのか、その内に機嫌が治っていました。
 その後ネットで探した文房具店に行きました。とても奥行きがある店で、駒は一番奥のガラスのケースにいれて売っていました。練習用と言って出してもらった、それほど高価でないものにしましたが、後学のために見ていると、相当な値のものもあり、びっくりしました。一緒に簡易の折り畳める将棋盤も買いました。
 帰りのドライブ中にいい富士山が見えました。静岡にいて嬉しいことのひとつ、年賀状用の写真を撮ることができました。さらに撮って選びたいと富士山の見える喫茶店で検索して、ペチカの燃える古民家風の店に寄りました。庭の木々は紅葉し、手入れも行き届いて、いいお店でした。雲があってここではいい富士山が撮れませんでした。車から撮ったものを年賀状に使うつもりです。

(少し加工して年賀状に使いました。)
 
 その夜、お祖父ちゃんは、駒を打って出る音に満足そうでした。
 家族が六人になると、にぎやかで楽しい。鍋も大きく、料理の時間も長い。でも、それが暖かくていい。嫁にやった娘という思いは残るので、遠慮はあるが、時々こういう長期の滞在もしたい。つくづくそう思う。 
 
玄関にホソバヒイラギナンテン
疲れ来て寒波の前に倒れたる
冬眠のまるまる二日回復す
床暖房ゲームに変はつてゐる画面
寒鰈娘のキッチンにて煮たる
将棋する二人の孫や日向ぼこ
三手詰問題解けた冬の夜
彫りの駒木の将棋盤冬の富士
将棋駒あるとふ文具店寒し
駒を打つ音に満足冬暖か
六人で大鍋おでん賑やかに