歌詞集一冊、歌いました。

歌詞集一冊、歌いました。
      2018/12/21
      十河智
 今大阪、寝屋川に帰り着きました。半年に一度は、故郷にも帰っておきたいと、なんという用事もなく、弟たちの顔と、SNS情報で知った香東川の白鳥を見に帰りました。

 昨日は、お年を召した高松句会の世話人の方をお訪ねしました。能の仕舞いをなさったり、少し目に不自由はあるものの、まだまだお元気で、病気や出歩けなくなったお友だちも励ましておられるような方です。
 私の生まれ育った高松の中心部にお住まいなので、句会に合わせて帰ることは余りないので、お訪ねするようにしています。お一人暮らしなのです。もと看護婦(師)、産婦人科の婦(師)長さんで、きびきび、押してきてくれる。そんな方です。

 伺うと、マンションがドアや廊下、階段部分がリホームされて、とてもきれいで新しくなっていました。注意書が目を引きました。「ドアの鍵を持って出てください。鍵開けを業者に依頼する事例が増えています。」あとで聞くと、自動で閉まってしまうようになったそうです。ホテルの様。
 弟たちの家に持ってきた、お取り寄せのお裾分けで、中津川のすやの栗きんとんと栗金鍔をひとつずつお持ちしました。
 そして、彼女から、手作りの甘酒と「二週間干して美味しくできた。」と、干し柿を分けてくださいました。その上に、「健康によいとテレビでやっていたので、荏胡麻と荏胡麻オイルを毎日食べている。今は、手に入りにくいくらいになっている。」と、買い置きの荏胡麻油をいただきました。これでは、頂き物が重くなって釣り合いが採れないのですが、ご厚意に甘えました。
 荏胡麻油は、胡麻油の代わりに使わせて貰おうかと思っています。甘酒は、行く度にいただきますが、間で私も、教えてもらったやり方で作ります。「甘酒は夏の季語。」と教えていただいて、もう何年になるでしょうか。「冬は温めて、生姜をたっぷり。」と、仰りながら、渡してくださいました。その通りにいただきたいと思います。干し柿も、甘くて美味しくできていました。うちの渋柿は木に残ったままなのですが、来年はやってみようかなと思ったりしています。この方は、そんな気持ちを起こさせてくれる方なのです。
 話が尽きないくらい、いろいろとおしゃべりしました。高松句会で選を受けていたもっとご高齢の方が、少し元気を回復され、もう一度合同句集を編んでくださることになった話。お能の発表会に奮起して今年も上京して出てきた話。仕舞いや謡の、お稽古のことから、衣装や流派の話。私も祖母が謡のと仕舞いを習っていたので、和綴じの謡の本は懐かしく見せていただきました。その一節を舞ったり歌ったりもしてくださいました。思えばこれが私の七五調の原点だったと、思ったりしていました。
 それから、最近お見舞いしたお友達と、老人会から配られた歌詞集で、歌を歌ってストレス解消をさせてあげたと、その本を持って来られました。「一緒に歌おう。」といわれ、隣に座られて、順番に歌っていきました。私はカラオケは苦手なのですが、歌謡曲や童謡は大好きで、日本の歌、紅白など歌謡曲の番組もよく見ています。車では鮫島由美子の歌うのに合わせて歌っています。なので、そこに次々現れる歌は全部歌えるんです。「これは?これは?」とページをめくられて、大きな声で二人で歌っていました。ほぼ一冊の歌詞集を制覇寸前に夫が電話してきました。もう日が暮れているのにそのときはじめて気づくほどでした。すでに四時間ほどいたことになります。そこでお開きとなり、すぐ近所の夫の実家まで、一緒に散歩がてら来てくださいました。「私が引き留めたから、ご主人にそういうから。」と。
 句会の進行などもですが、ソフトでぐんぐん引っ張ってくださる。「まだまだ元気でやっていけるけど、少し考えてもおかないと、と思っている。」、なんてお話ししてくださっているうちに、夫のいる場所に着きました。
 ここいら辺は、どこにもかしこにも、私の幼い頃の思い出が染み付いていて、走り回る私がいて、友達や知り合いの影があって、元気になれるところなんです。
 法事とかではなく、ただなんとなく来た故郷の二日間が、楽しくて、大満足でした。
 弟の嫁に、お正月のお雑煮用の餡餅、白餅、白味噌を送ってくれるように頼みました。
 昨日いただいたものに加えて、香川のお醤油を二種類手に入れて、香川の蜜柑も貰って、細天、海老天も買ってきて、車の中はぐちゃぐちゃでした。
 雨で霧深い瀬戸内海の島紅葉や四国の山紅葉を見ながら、大阪へ帰ることができました。濡れた紅葉の色は濃く綺麗でした。

年用意高松に来て買ひ揃へ
白鳥に心残りや里の川
リホームのマンションドアちやんちやんこ
謡曲謡曲集暮早し
荏油(えのあぶら)飲んで元気に老いの冬
数へ日や用意して置く遺言書
二車線化急ピッチなり紅葉山
冬霧や遥かに四国山地かな
瀬戸の雨色濃き島の冬紅葉
メゾソプラノ聴きつつ唄ひつつ帰阪 
十河智