當麻寺奥の院の襖絵、お披露目

當麻寺奥の院の襖絵、お披露目
       2018/12/09
       十河智

 この前の木曜日に當麻寺「大方丈」の襖絵のお披露目の公開を見に行きました。上村敦之さんの描かれたものです。奈良には、上村松園、松篁、敦之、三代の松伯美術館があり、よく行きます。松篁さん、敦之さんは、そこの敷地付近に、植物を植え、鳥を飼って、日々デッサン、写生をしておられると、テレビなどで見たことがあります。
 あいにくの雨で寒い日でした。門前の駐車場は、出ていく車の後に入ることができました。無人で、五百円をポストにいれます。百円玉が四枚しかなくて、後から足すことにしました。 参道の茶店で、温かいにゅうめんと柿の葉鮨のセットとコーヒーをいただきました。この頃はどんなところでもコーヒーがあるので、食後が落ち着きます。お店は、昼過ぎなので一人で切り盛りしていましたが、寺から降りてきた人、これから行く人で満席、忙しそうでした。やはりにゅうめんが人気でした。一人の人、夫婦連れ、何人かのグループ。平日の鄙びたお寺にも、イベントには人が来るのだなあと感じていた。お釣に百円玉を入れてもらい、ポストに入れ足してから、お寺に登って行った。
 いつもより少したくさん歩いて奥院に。三三五五、手摺の譲合いなどもあり、絵の話、雨に濡れた石段への注意、そこここに声があった。時雨の冷たい空気の中に、ふぅっと温さが過った。石蕗の一群れが足元明かりのようであった。
 暗い建物の広い土間、玄関の間には、安土桃山時代の絵が残されていた。
 そこを庭の方から廊下伝いに各お部屋の襖絵を巡って鑑賞していく。
 最初の座敷でテレビで、このお披露目を報じるローカルニュースを繰り返し流していた。
 枯山水のお庭と、散り紅葉で敷き詰められたお庭、裏表に表情は違っていてお庭も見応えがあった。
 庭からの採光で、明るさが自然で、鳥たちの生き生きとした羽ばたきを見ることができた。一部屋ごとに四季が描かれているようであった。
 襖一枚、裏の部屋に入ると、今見てきた絵を愛でて評する声が聞こえる。「開けたらびっくりするやろうなあ。」主人が今にもやりそうに言う。
 楓の木がほぼ散ってしまっていた。「ちょっと来るのが遅かったなあ。」またボソボソと呟いている。
 写真を撮ってもいいと言われたのだが、電池切れ。またとない機会を逃してしまった。展覧会ではないので、絵葉書やカタログもなかった。
(余談になるが、この四時間ほど、世の中の SoftBank、Y- mobile 携帯では、通信障害が起きていたと後で知った。遮断されて、別世界にいたことは、幸運であった。)
 襖絵のつくるお部屋は、當麻寺奥院の佇まいとよく馴染んで、派手過ぎない、静粛な雰囲気である。少し新しく、明るく、現代的。ゆっくりと鑑賞して、雨が強くなっている外へ出た。

 境内を集団下校する小学生たちの元気が、雨に関わらず、眩しかった。

にゆうめんと柿の葉鮨や當麻寺
北風や雨もぱらつく仁王門
寒きかな安土桃山時代の絵
お披露目のローカルニュース冬座敷
奥の院の庭敷き詰めて散る紅葉
散る紅葉一日早く来てゐれば
枯れ庭や襖絵の鳥遊ぶかに
冬の鳥松伯美術館の庭
襖絵の裏に声あり冬の寺
時雨るるをゆるき階奥の院
石蕗の雨に足元明かるくし
訪れし記念に拾ふ散り紅葉
北風と寺内を走る小学生