京都大学薬用植物園特別講演会・見学会

京都大学薬用植物園特別講演会・見学会
        2018/11/19
        十河智

 京都大学薬学部構内附属薬用植物園及び講堂で、11月4日に開催された 京都大学薬学部構内附属薬用植物園及び講堂で、11月4日に開催された京都大学薬用植物園特別講演会・見学会に行った。
 講演は、一般市民に誤解の多い風邪薬としての漢方薬についての正しい知識を教えてくれる矢久保先生の講演と、今は、東アジアを中心に全世界に広がる漢方薬原料生薬の生産現場を紹介するツムラの野村先生の講演と、二本立てであった。
 久し振りにこれを機会に会おうと薬学部の仲間が五人ほど出席した。他の人たちは薬草園は何回か行ったので、お昼を、ゆっくり歓談の場にしたいと、百万遍に最近復活の喫茶店「まどい」に予約していた。
 私は、学生時代にあった薬草園を、講堂の建設にともなって、移設したあと、見たことがなく、抽選にも当たっていたので、午後からも引き続き残ることにした。
 大学の講座は、現代の学問の潮流に沿って、名称も変わり、天然物を大量採取して、そのものから抽出したりする研究する手法もほとんど無くなってきていて、薬用植物園も、一応私の出た薬用植物化学教室の後継教室で管理を引き受けてはいるが、薬学部の設置基準を充たすためにだけあるような様子であった。
 
 次第は下記の通り、告知は一般市民に向けても行われており、市民大学的な、教養講座である。
  
10:00~ 受付
10:25 ~10:30 開会挨拶 薬学研究科長 中山 和久

10:30 ~11:15 特別講演1 「カゼに葛根湯‥‥だけじゃない 」 明治薬科大学教授 矢久保 修嗣
 症状の軽重や、経過、体質によって、使い分けると言うこと。風邪には、葛根湯だけではない、と言うこと。

[異病同治→漢方的に症が合っていれば、同じ処方を使ってよい。]
 葛根湯は、風邪だけでなく、肩こり、筋肉痛、鼻炎などにも使う。

[同病異治→同じ病気でも症状により薬を変える]

【桔梗湯】
  咽喉痛

【葛根湯】
  発熱するが汗のでない人
  項背のこわばり  重篤でない

麻黄湯
  高熱で発汗がない人
  体の節々の痛み  やや重篤

【桂枝湯】発熱しないで汗が出る人

その他症状に応じて、
【小青龍湯】【麦門冬湯】【柴胡桂枝湯】【麻黄附子細辛湯】【半夏厚朴湯】【竹茹温胆湯】

 講演で印象にのこったこと。

 ※漢方薬のエキス剤も湯(とう)とあるものは白湯に溶かして温かくゆっくりと飲用すること

 ※インフルエンザなどの発熱では、幼児解熱鎮痛剤に注意すること。
 アスピリンの使用は、ライ症候群のリスクが35倍上がる。
 インフルエンザ脳症は、五才以下の幼児の発熱後0から2日以内に起こるが、ジクロフェナク(ボルタレン)やポンタールの類
を使用することで、症状が悪化

 ※インフルエンザ治療薬の耐性菌が出ているものが既にあること。また10才以下の子供には、服用後異常行動への観察が必要。

 ※五十人に一人桂皮(シナモン)のアレルギーがある。桂皮のアレルギーを、京都では八ツ橋が食べられるか、好きか、どうかを聞いて、まず見分けるという。これが案外有効だという。そう、シナモン(桂皮)にもまれにアレルギーがあるのだ。従って、葛根湯に全く副作用がないわけではない。
 
11:15 ~12:00 特別講演2 「 生薬の生産現場 葛根湯編」 株式会社ツムラ 野村 秀一
 葛根湯に限らず、漢方の原料生薬をツムラでは、全て、管理の行き届いた適正な気候条件の農場での栽培品にすることをめざしているという。講師の方も全世界を飛び回ったという話もしていた。
葛根(カッコン)、大棗(タイソウ)、麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)それぞれについて話してくれた。
 ※生姜は日本産が良いらしい。日本でしか栽培できない原料生薬もあり、産地は、成分分析など、科学的に最良の品質が得られる産地での栽培を目指している。

12:00 ~13:00 昼食休憩
 ここで、友人たちと別れて、持参のサンドイッチとコーヒーで昼食

13:00 ~14:30 附属薬用植物園見学会  解説︓薬学研究科 伊藤 美千穂
(*荒天等により中止の場合あり)
 五十人ずつくらいで班に分けて、三・四人の先生が、それぞれの班についた。大学院生の班が、丁寧な説明のようだった。
 漢方メーカーや、歴史ある薬草園は多く、今までも見学してきた。どこも、農薬も使わず、虫も雑草も多いそうだ。落葉の季節と言うことがあったとしても、ここは、手入れがもうひとつ行き届いていない気がした。見学会の前に雑草だけは抜いてもらって、それでも整備したとは説明していたが、少し残念であった。
 花梨の実が落ち放題、零余子も薬効部分ではないので要らないようだった。見学者からもったいないの声が聞こえた。
貰って帰る人もいたようであった。
 香蘇散の原料生薬のカヤツリグサは、ここでは雑草ではないのだが、境界がわからなくなっていた。
 そうは言っても、基本的に薬草園は楽しい。同好の人たちとワイワイガヤガヤ、葉っぱを較べたり、草根木皮を囓らせてもらったり、すぐに時間が過ぎた。

 お土産にヒオウギの根分けしたものをもらって帰った。

風邪を引く葛根湯が効きにけり
紅葉寺八ツ橋薄茶頂いて
馴染みある講師の講義生姜湯
黄落期薬草園に聴講生
花梨の実百個落ちたる大樹かな
薬草園零余子無用であるらしく  十河智
 講演は、一般市民に誤解の多い風邪薬としての漢方薬についての正しい知識を教えてくれる矢久保先生の講演と、今は、東アジアを中心に全世界に広がる漢方薬原料生薬の生産現場を紹介するツムラの野村先生の講演と、二本立てであった。
 久し振りにこれを機会に会おうと薬学部の仲間が五人ほど出席した。他の人たちは薬草園は何回か行ったので、お昼を、ゆっくり歓談の場にしたいと、百万遍に最近復活の喫茶店「まどい」に予約していた。
 私は、学生時代にあった薬草園を、講堂の建設にともなって、移設したあと、見たことがなく、抽選にも当たっていたので、午後からも引き続き残ることにした。
 大学の講座は、現代の学問の潮流に沿って、名称も変わり、天然物を大量採取して、そのものから抽出したりする研究する手法もほとんど無くなってきていて、薬用植物園も、一応私の出た薬用植物化学教室の後継教室で管理を引き受けてはいるが、薬学部の設置基準を充たすためにだけあるような様子であった。
 
 次第は下記の通り、告知は一般市民に向けても行われており、市民大学的な、教養講座である。
  
10:00~ 受付
10:25 ~10:30 開会挨拶 薬学研究科長 中山 和久

10:30 ~11:15 特別講演1 「カゼに葛根湯‥‥だけじゃない 」 明治薬科大学教授 矢久保 修嗣
 症状の軽重や、経過、体質によって、使い分けると言うこと。風邪には、葛根湯だけではない、と言うこと。

[異病同治→漢方的に症が合っていれば、同じ処方を使ってよい。]
 葛根湯は、風邪だけでなく、肩こり、筋肉痛、鼻炎などにも使う。

[同病異治→同じ病気でも症状により薬を変える]

【桔梗湯】
  咽喉痛

【葛根湯】
  発熱するが汗のでない人
  項背のこわばり  重篤でない

麻黄湯
  高熱で発汗がない人
  体の節々の痛み  やや重篤

【桂枝湯】発熱しないで汗が出る人

その他症状に応じて、
【小青龍湯】【麦門冬湯】【柴胡桂枝湯】【麻黄附子細辛湯】【半夏厚朴湯】【竹茹温胆湯】

 講演で印象にのこったこと。

 ※漢方薬のエキス剤も湯(とう)とあるものは白湯に溶かして温かくゆっくりと飲用すること

 ※インフルエンザなどの発熱では、幼児解熱鎮痛剤に注意すること。
 アスピリンの使用は、ライ症候群のリスクが35倍上がる。
 インフルエンザ脳症は、五才以下の幼児の発熱後0から2日以内に起こるが、ジクロフェナク(ボルタレン)やポンタールの類
を使用することで、症状が悪化

 ※インフルエンザ治療薬の耐性菌が出ているものが既にあること。また10才以下の子供には、服用後異常行動への観察が必要。

 ※五十人に一人桂皮(シナモン)のアレルギーがある。桂皮のアレルギーを、京都では八ツ橋が食べられるか、好きか、どうかを聞いて、まず見分けるという。これが案外有効だという。そう、シナモン(桂皮)にもまれにアレルギーがあるのだ。従って、葛根湯に全く副作用がないわけではない。
 
11:15 ~12:00 特別講演2 「 生薬の生産現場 葛根湯編」 株式会社ツムラ 野村 秀一
 葛根湯に限らず、漢方の原料生薬をツムラでは、全て、管理の行き届いた適正な気候条件の農場での栽培品にすることをめざしているという。講師の方も全世界を飛び回ったという話もしていた。
葛根(カッコン)、大棗(タイソウ)、麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)それぞれについて話してくれた。
 ※生姜は日本産が良いらしい。日本でしか栽培できない原料生薬もあり、産地は、成分分析など、科学的に最良の品質が得られる産地での栽培を目指している。

12:00 ~13:00 昼食休憩
 ここで、友人たちと別れて、持参のサンドイッチとコーヒーで昼食

13:00 ~14:30 附属薬用植物園見学会  解説︓薬学研究科 伊藤 美千穂
(*荒天等により中止の場合あり)
 五十人ずつくらいで班に分けて、三・四人の先生が、それぞれの班についた。大学院生の班が、丁寧な説明のようだった。
 漢方メーカーや、歴史ある薬草園は多く、今までも見学してきた。どこも、農薬も使わず、虫も雑草も多いそうだ。落葉の季節と言うことがあったとしても、ここは、手入れがもうひとつ行き届いていない気がした。見学会の前に雑草だけは抜いてもらって、それでも整備したとは説明していたが、少し残念であった。
 花梨の実が落ち放題、零余子も薬効部分ではないので要らないようだった。見学者からもったいないの声が聞こえた。
貰って帰る人もいたようであった。
 香蘇散の原料生薬のカヤツリグサは、ここでは雑草ではないのだが、境界がわからなくなっていた。
 そうは言っても、基本的に薬草園は楽しい。同好の人たちとワイワイガヤガヤ、葉っぱを較べたり、草根木皮を囓らせてもらったり、すぐに時間が過ぎた。

 お土産にヒオウギの根分けしたものをもらって帰った。

風邪を引く葛根湯が効きにけり
紅葉寺八ツ橋薄茶頂いて
馴染みある講師の講義生姜湯
黄落期薬草園に聴講生
花梨の実百個落ちたる大樹かな
薬草園零余子無用であるらしく