當麻寺へ行かない?

當麻寺へ行かない?
        2018/10/07
        十河智

 台風25号は逸れて、それなりの風と雨を残しつつも、青空のある暑い日となった。どこかに出掛けたくて、主人を誘うと、連休だからと乗り気ではなさそうだった。
 そこへ小学校から高校までの友達で、一番近い守口にすむ友人が、久し振りに電話してきた。何の用はないが、といって。まだバイクに乗って、足が痛い、肩が痛い、といいながらも、身軽く出かけられる人である。バイクは、遠出はしなくなったという。あまりそっちへ向いては行かないというので、奈良の當麻寺へ誘った。
 うちへバイクで来てくれた。そこからいつもの道の駅「ふたかみパーク當麻」で食事と思っていたら、何故か食堂だけ臨時休業。その食堂からの田園風景は見せられなかった。売店でおこわとお寿司のパックとおすすめのチーズケーキを買って、入り口屋台の椅子席で、分けあって食べた。コーヒーは曳くタイプの自販機で。
 台風が熱波を引き込んで暑い日ではあるが、たまに思い出したように風が背中を撫でる。主人がご飯を少なく、お菓子は必ず、のいつも通り。私と友人は、お菓子は取り分を持って帰ることにした。幼馴染みだからこその心安さで、高校では同窓のその人の主人にもお土産といって、お箸で割ったチーズケーキを半分。売店で持ち帰り用に容器を貰った。これからすぐの當麻寺へ行くので、花を買うのは我慢した。
 當麻寺門前の駐車場、十台位なので、残りは少なかった。まだ紅葉に早いが、連休だからだろう。料金はここに入れてくださいと、木箱が吊られていた。仁王門までの塔頭のお庭なども、そんな風だった。のどか。友人は、昔同窓生のみんなと来たかもと言い出すが、あまりに来すぎているせいか、そのときが思い出せない。
 まさか降ると思っていない雨が振りだした。濡れてもと高を括っていたが、かなり強くなった。来るときにはるか向こうに見えていた雨雲の下に入ったのだと思う。鐘楼の横の木の下で少し待った。境内の砂利の窪みが潦に。落葉も一、二枚。もう晩秋といっていい。
 今日は、友人が奈良に親しむ入り口にと、道案内のつもりなので、早めに竹内街道から太子町へ抜け、ここかしこと、歩けるところを紹介しながら、自宅へ戻った。生駒山はほんの少し紅みが差してきていた。

秋の山たまの電話の人誘ひ
秋暑し食事処は休業す
素風来る外唐揚げと寿司パック
ワンコイン受ける木箱や秋湿
薄紅葉傘なく暫し小糠雨
水澄みて潦ある當麻寺
色なき風大樹でありし切り株に
本堂と金堂に人小鳥来る
秋日射す中将姫と浄土池
黍嵐竹内街道廻りして
秋の色いつも見てゐる生駒山