「型」で学ぶはじめての俳句ドリル、を読みました。

「型」で学ぶはじめての俳句ドリル、を読みました。
       2018/09/18
    十河智 

「型」で学ぶはじめての俳句ドリル
 岸本尚毅、夏井いつき共著
  祥伝社

この本を読みました。

 お二人が現在講師でいらっしゃるNHK俳句や夏井さんのプレバトは録画して見ている。
 夏井いつきさんは、俳句に人々を誘い、裾野を広げたいと行動されている。
 私は、俳句の上手、天才ではないが、句会で俳句を観賞しあう雰囲気も好きだし、何よりも、この短い定型の中に、日本語を詰め込み、表現できることは何か、自分でそれを試すことも、その結果を、人の、とても詩的な、あるいは、毒気をも放つ、句の中に読み取り、伝わることの、神秘を味わうこともとても好きで、俳句の世界に浸りきっている。裾野をを拡げ、この醍醐味が多くの人に味わってもらえたらと常々思っている。それは、俳句の伝導師たる夏井いつきさんの思いと通じるものと、感じてもいる。
 岸本尚毅さんは、私にとって、どの句会でも、選者。お会いしたことはないが、師系の先達であり、今一番近い先生といえる。
 句会経由で、しばらくぶりに、入門書もよんで見たくなり、また、このお二人の組み合わせがどう展開されるのか、興味津々で、買ってみた。
 読者の想定の範囲から私は少しずれているのかもしれない。とにかく、手元にあると、この装丁が目に痛い黄色で、どこまでも続き、ページが躍るようなスタイル。章見出しにも、所々に挟まれる、「コラム」「ドリル」にも、この黄色が系統的に使われていて、目に眩しく、私の持つ俳句のイメージに合わず、全体的に読みづらく、本として取っ付きにくく、難儀した。
 でも、中味を読んでいくと、字だけが浮き上がり、会話形式で読みやすく進み、例句として使われているのが、しっかりと虚子に選を受けた『ホトトギス雑詠選集』、この中の句をもとに、岸本先生がドリルを作成、それをこなしてゆくことで、俳句が、俳句らしく作れるように導かれる仕組みになっている。夏井先生のチーム裾野を知り尽くした問題提起があって、俳句の世界の隅から隅までを、岸本先生が、まるで太平洋の海原に一人漁に出るかのごとく、その場にあった例句を探してこられる。解説や対談で、例句を解剖したり、料理法を示したり、この本を読んで俳句を作ろうとする人の感性にマッチするものが手に入る工夫もなされているように思う。色やイラストに邪魔されることがなくなると、ほんとによく考え尽くされていて、さすがの組み合わせであった。
 ただ、この本の内容は、ある程度、いやかなりの程度、俳句への傾倒度が高い人の自習用か、指導する側の指針(先生の虎の巻)のような気がした。もう既に裾野を彷徨している人たちにはありがたい一冊であろうと思う。