岩田由美句集「雲なつかし」を読みました。

岩田由美句集「雲なつかし」を読みました。
       2017/12/24
       十河智

 岩田由美句集「雲なつかし」を読みました。ご主人の岸本尚毅さんの帯の一言「いい句もある」に、どきっとして、本を開ける前に、興味が湧きました。お二人とも、私の参加する句会の選者。
 題の「雲なつかし」、青空に浮く白い雲、いつも見ているけれども見飽きない、よく見れば、なにか懐かしいものを思い出す。そんな感じに、眼に映り感じたことが俳句になっていました。都会の主婦の日常、散歩の途中、訪れた名所、隣接する自然、故郷岡山、父母、こどもの情景、一歩一歩、一瞥一瞥にある気付きが句になっていますが、くっきりと素直、控えめながら、訴えかけてくるのです。俳句の中にではなく、視点に作者を感じるのです。


特に好きな15句

返す波引き込みながら卯波かな
秋晴れに申し訳なし窓を拭く
深川や菊も芭蕉も鉢仕立
どこ歩くとも団栗を踏みこはす
雷一打晴れ上がりたる伽藍かな
反論の声の震へて夜学の子
うららかや猫に向ひてうたふ歌
まなじりに仕上げの紅や祭髪
田の廃れ家の廃れて梅白し
滝涼し吹かれて風に曲がるとき
キヨと鳴いて飛び立つ鳥や夏蜜柑
人を打つ椎のつぶてや国衙
県庁のチャイム聞こへて日短か
通学の子に温石を一つづつ
苗売は千葉の人なりよく笑ふ