オノ・ヨーコの「ファミリー・ヒストリー」

オノ・ヨーコの「ファミリー・ヒストリー」
        2017/12/24
十河智

 最近はテレビ番組はだいたい録画で見ている。CM をスキップできるということ、BS、CS と放送が重なって、どちらも見ることができるということ、そんな理由からである。
 ただ、この年末年始や三ヶ月置き位の番組改編期の特番や時間延長には対処し兼ねて、思いもかけぬものが録画されていたり、番組は途中でバサッとぶち切れていたり、さんざんである。しかしたまにはこんないいこともあるのだ、ということがあった。もう再放送はないと、諦めていた、「ファミリー・ヒストリー」オノ・ヨーコ編が、深夜の再放送枠「ブラタモリ」に入ってきたのだ。信じられなかった。NHK、やるな👊😃💕、と思った。
 ヨーコについては、私は世間一般通りの偏見と誤解を持っていたようだ。前衛美術家というけど、何をしているひと?ビートルズを仲間割れさせた人、世間知らず・苦労しらずのお嬢様、レノンを舞台から遠ざけた張本人。この番組は、これらの偏見や誤解のほぼ全てに応えてくれていた。見応えがあった。特に、私も経験済みの男社会に一人立ちしようとする女としての苦闘。
 息子が問う「ママは苦労したんだね?」
 ヨーコが答える「女だからね。」
 ここに全てがあったのかと、打ちのめされた。私にも、弟、夫、社会、それぞれの関係性や選択肢、生き方に数々の煩悶があった。自分の歴史として、忘れられない記憶として仕舞い込まれているものである。ヨーコも同じ煩悶のなかを先に歩いていたのだと、この一言に初めて気づかされた。
 家族が取材に応じているのも始めてみたように思う。姉への暖かい心が伝わってきた。
 レノンとヨーコの出会いの、天井に書かれた、゛yes ゛、着ている服を切り刻ませる展示、レノンとのベッドイン、゛Imagine ゛の歌詞のorigin はヨーコと認定され、二人の共作とされた話、この番組で、ヨーコの側から聞くと、胸が詰まる。私の服も、嘗て、ボロボロに切り刻まれていたような気がする。理解の程度はレノンほどではないが、梯子を登ってきて、゛yes ゛を見つけてくれた夫、つい横に居る、興味がなくて寝てしまっている彼を見直していた。
 近頃にない価値ある番組となった。
 
レノンの忌ヨーコの苦労女だから
ヨーコには数ある誤解樹氷
Imagine ヨーコの書きし古日記
寒紅やヨーコの母はお姫様
残されて寄り添ふ母子クリスマス
十二月聴いてみやうかビートルズ
弟妹の語るヨーコや冬暖か