71歳になる、そして、はしだのりひこの訃報に接する日

 71歳になる、そして、はしだのりひこの訃報に接する日
       2017/12/04
       十河智

 十二月二日、私は71歳になった。少し贅沢な外食をしたが、ケーキはやめた。婿から祝いのメッセージがFB 上に届いた。娘は孫に翌日祝いの電話をさせた。気づいたら三日だったと。まあそんなものだろう。自分の歳も計算しないと出てこないのだから。天気がよい日であることが最高のお祝いに思える。
 その誕生日に、Yahoo!で、元フォークルのはしだのりひこさんの訃報を読んだ。ひとつ歳上の人だが、まだ若いと思うと、自然と哀悼の意が湧いてくる。
 彼が活躍したのは、私が大学生の頃、たくさんの彼の曲を歌のレパートリーに入れた。中でも「風」はとても好きで、よく歌った場所がある。冬に帰省した自分の部屋の手すりのある窓辺である。拡幅整備されたてのプラタナスの街路樹の並ぶ歩道のある道路。プラタナスの落葉は固く、コロコロ転がり音をたてる。ラーメン屋が屋台でチャルメラを吹きながら通りすぎる。曲の雰囲気のど真ん中にいて、気持ちよくかなり大きな声で歌っていた。時代は高度成長期に突入直前であった。私は、若かった。夢も挫折もあった。そしてこの歌にある孤独感や寂寥感にも酔っていた。懐かしい。いろいろなことを思い出した。
 そう言えば、最近の高校の同窓会のアルバムDVD の音楽は、杉田二朗の歌う「風」であった。他の皆にも思い出がある曲なのだろう。
 
小春日やはしだのりひこ訃に接す
そこにただ風が吹くだけ冬の窓
プラタナス枯葉舞ふ音チャルメラも  十河智