瀬川泰之さん、これからもお話しできますよね。

瀬川泰之さん、これからもお話しできますよね。
       2017/11/29
       十河智

冬空を皇帝ダリアの孤高かな
遺言のごとき俳句や冬将軍
フェイスブック訃報の届く冬寝覚
 
 瀬川泰之さんがお亡くなりになった。三年に満たない、ネット上でのお友だち、数々の優しいお言葉を、コメントしてくださった。フェイスブックを検索、振り返り、抜き出してみた。しかし、思い出に一番残る、「僕に俳句の作り方が似ているかもしれない」というコメントは、見つけられなかった。
〔トモ子さん「秋惜しむ私の生きたこの時代」おお同志が居たかと感動しました。〕
〔トモ子さんいい句ですね。特に白鷺の句がいい。僕も農道をよく歩きますので日本の豊穣の秋を享受しています。〕
〔全くの同感です。この時期は喪中葉書ばかりですね。〕
〔紅葉を見るのも容易ではないですね。〕
〔僕たち夫婦も九月二十五日が免許更新です。高齢になると大変ですが、頑張って更新します。〕
〔トモ子さんの春の陽気に誘われていそいそと句会へ出掛けられる様子が見えてきます。〕
〔御伽噺の世界です。〕
〔三句ともに素晴らしいです。〕
〔「春一番そしてそれから雨になる」をいただきます。〕
〔老いに酔い酒に酔いいいですね。〕
〔岸田恵子の美しさは忘れられません。〕
山滴る とても素敵です。僕も誰も居ない山でラヂオを聴くの大好きです。〕
〔星のブランコ 素敵な句ですね。〕
 どの言葉も、私の短文と俳句に寄せられた感想であるのだが、誰よりも、押し寄せる老いの不都合とか、この歳ゆえの感慨に共感してくださり、コメントしてくださったのだと、フェイスブックの大きな海に、投げ入れてきたものを拾いきれないながらも、再び探索しつつ、ありがたいことであったと噛み締めている。
 私も追うとわかっている旅に立たれたのであるが、私のこれからそのときまで、最後の最後まで、俳句とともにと、勇気づけてくださっている気がする言葉である。

 以下に、多分もうお具合がよくなかったかもしれない時期のフェイスブックに発表された泰之さんのお句、心にしまっておくために、挙げさせていただく

秋の夜や突然電話誕生日 泰之
秋夜長長生きしてねと孫二人
元寇の防塁石垣花芒
湾に沈みし船数百と秋の声
べた凪の秋の湾兵士らの声     (2017/10/18)
茫々と千人塚や花芒 泰之
秋の浜だんだんと漂着物なりゆくか
庭の隅鶏頭一本忘れられ
花芒見え隠れするあなたあなた
秋雨や濡れて一票施行する
 (2017/10/20)
草紅葉三歩歩めば雲になる 泰之
一葉二葉と離れ流れる柿黄葉
金木犀母の野良着の匂いかな
季節外れのコスモスと俺が立つ
コンビニおでん沸々と選挙
 (2017/10/23)
秋夜長テレビ電話の孫逞しく 泰之
重き一票アルミ箱へ冬落暉
台風一過大根の葉の潮もみに
台風一過木の葉貼りつく窓ガラス
芒原病みたる足を踏み入れる
 (2017/10/27)

泰之さん、これからもお話しできますよね。よろしくお願いします。