京都、イノダコーヒー本店のテラスにて

京都、イノダコーヒー本店のテラスにて
         2017/6/1
         十河智

最近歯医者に通っている。自分の歯がまた一本抜かれてしまった。麻酔が利きにくいので、昔、多めに入れられて、大変なことになった経験があり、時間を掛けて貰った。上手な先生で、痛みもなく、出血も直ぐに止まり、正午ごろ、歯科を出た。お昼時だが少し時間を潰し、食事はもう少し後にしたかった。
 この前、偵察だけの終わったイノダコーヒー本店に、時間稼ぎに高速に乗らず、国道一号線で行くことにした。第二京阪開通後はあまり通らなかったが、迂回路が増えたためか、渋滞はなかった。午後一時には着いた。
 庭が見たいと粘り、テラスは喫煙席だがよいかと、テラスに案内された。三条店でも、イノダコーヒーは、窓に近い私たちが座りたいところは、喫煙席だった。今日はテラスなので、そこでもいいと庭の真ん中に陣取った。「たいした庭でもないやんか。」無理を言って運転させた主人の呟き。思っていたより狭い庭で、マンションの谷間、綺麗に人目を避けてはいたが、ちょっと期待しすぎていた。それでも、緑濃くなった木々の葉が風に揺れ、西洋風の蹲の水の溢れては池に落ちる動きが涼しくて見飽きなかった。テラスが緑陰になる様に、背の高い木や塀に這わせた藤が癒しの緑を注いでくれた。
 人懐っこい若い男の子のウェイターが、お湯といえば直ぐにお湯を、食事が終われば、食器を引き上げ、ひとつしか頼まなかったケーキに、フォーク二本の心配り、私たちのような老夫婦をよく知っているサービスぶりで、居心地よかった。一時間ほど、ゆっくりした。

時折の青葉の風や狭庭にて
マンションの高きにカシワ青葉かな
目隠しの緑の隙(ひま)に陽の射しぬ
見上ぐればベランダに干す白きシャツ
流れ来る紫煙も赦す緑陰に
ひとときの憩いテラスの楓青葉