対談:小川軽州、小澤實

対談:小川軽州、小澤實
      2017/5/31
      十河智

 5月30日、梅田TSUTAYAで、小川軽州さんと小澤實さんの対談があると知ったのは、Facebookでの牙城さんの告知によってであった。その組み合わせでで名前が並ぶこと自体が、私には意外で、感慨があった。一ヶ月ほど前であったが予約しておいた。
 小川軽州さんも小澤實さんもNHK俳句の選者を勤められ、今大活躍なさる俳人である。このお二人の対談となれば、若い方たちも相当関心があるに違いない。
その前日にTSUTAYA からの予約確認メール、いよいよである。
梅田は夕方の混雑時、私のようなとしよりは、通行の邪魔、走る若い人がすばやく避けていく。あちこちで旅行鞄か何かのぶつかる音がする。改札を出たところには外国人専用のインフォメーションがある。ちょうど英語での応対が終わったとことみたいだったが、TSUTAYA はどっち方向か聞くのも躊躇され、当てずっぽうに流されていくと、どうも間違えたよう。また逆方向に戻る。エスカレーターを上がると見たことのあるところに出た。大阪駅は、最近大きく変化していて、来る度に違う。入り口や建物、店の名前も直ぐに覚えられない。ようようTSUTAYA に行くエレベーターに乗り込む。エレベーターを降りるとTSUTAYA ではあるが、広すぎて、誰に、何処に行って、聞けば良いか。「つたやの方ですか?」、それらしき人に何度か声を掛けた。やっと案内して貰ってたどり着いた。かなりの席がもうけてあり、参加する人が多いとアナウンスしていた。
 予約番号で受付を済ます。里の方が還暦パーティでお会いしていたのか、智さんと声を掛けてくださったのに、お顔がわからずに、失礼してしまった。座って待っていると、仕事帰りに来たと森賀まりさんが話しかけてくれた。「このお二人がどんなお話をなさるか、とても気になって」と、正直なところを話したりした。貰った紹介の栞に、小澤實さんの「鷹」での経歴の記載はなかった。
 お二人がお見えになり、紹介された。軽州さんの自己紹介のとき、自然な形で、小澤實さんが「鷹」のご自分の前の編集長であり、兄事する先輩であると関係をそう表現し、若い頃のエピソードを語った。小澤さんは、「澤」創始以前の記憶は飛んでいると、最初はそういっておられたが、話の雰囲気が、自然に和やかになっていった。お二人が会われるのは、小澤さんが「鷹」を去って以後、はじめてだそうである。お二人の話されるお話のなかに、小澤實さんのフアンだった私も直後くらいに「鷹」を辞め、その後師と仰いだ田中裕明さんも登場した。
 一介の投稿者に過ぎない会員であったが、俳句の初めの何年かを「鷹」で勉強させてもらい、多くの俳人たちの佳句に接することができた。しかし小澤實さんの去り方と藤田湘子の憤りに満ちた文章は唐突で強烈であった。今でもその語気の荒さのようものを覚えているくらいである。ショックであった。怖いものを感じて「鷹」を離れた。故に、軽州さんのことはあまり知らない。小澤實さんのその後のご活躍も遠いところの出来事であった。お二人の対談のなかで、天国の湘子がどういうか、そんな話もあった。時代は動く。俳句の世界、敢えて俳壇とは言わない、にも新しい牽引者が必要である。新しい時代にこの場でのお二人の握手はとても大事な転換点になるだろう。
 お二人の本題、俳句についてのお話にも得るところが多く、とてもおもしろかった。特にアニミズムの話がおもしろかった。帰りに本を三冊買って帰った。TSUTAYA さんにもお礼ができた。

走る人ぶつかる音や夏の駅
汗拭ふTSUTAYAの隅の隅に来て
対談は核心を衝く暑きかな
夏の灯や鏡文字なる蔦屋書店
隠さずに避けて通らず病葉も
青嵐専従兼業俳人二人
敬ひて芭蕉を語る夏の暮
片陰や都会にもあるアニミズム
我もまた離れしところ落し文
夏の夜の大阪駅は明かる過ぎ