助けあって

 助けあって
      2017/5/7
      十河智
昨日は少し雨模様だったので、竹落葉が風で溝に溜まって放っておけなくなり、側溝を浚うことにした。ついでに、庭の端のブロック塀に隣接する竹藪から定家蔓と藤の蔓が絡まり、勢いよく侵入してきているので、できる範囲で刈り取ってすっきりさせて置こうと、朝から剪定鋏を使っていた。うちは横に長い敷地でブロック塀も側溝も長い。裏の池の辺りに自生する藤の花も竹に巻きついている分には、連休頃見頃で浅い藤色が揺れて綺麗なのだが、ちょっと放置すると庭木に絡まりどうしようもなくなる。
 一仕事終えては、低い塀に腰掛けて休む、池からの風が気持ち良い。今日は初夏の汗ばむ気温だ。近くにある公民館を見ると、御近所さん方が、地域交流のイベントで、月一回カフェを開く日で、集まっているようだ。
 葛の類を塀から引き離し、池の方へ押し遣った後、庭の矩面を上がる時、白く牡丹が開いていた。この牡丹は、犬を飼っている時は、よく庭を走る犬に痛め付けられていて、一株だけ生き残ったものだ。年寄りにはもう生き物を飼う余生があるとは思えず、今は、夫婦だけの暮らしである。
 いよいよ今日の仕事と思っていた側溝の掃除にかかった。駐車場の溝に渡してある重い溝蓋を外して道路に置こうとして、左手の人差し指を挟んで、表面がもげた。案外深い傷で、出血がすこし多く、服に飛んだ。もげた部分は繋がっていたので、助けを呼んで、止血のためのバンドエイドで押さえ、溝浚えだけはやってしまった。浚えたり、掃いたりは、さすがに夫がやり、私はごみ袋を持ってついていくだけになった。まあ、こうして窮地の時には、助け合い、二人で何とかやっていけている。普段しないことをする夫の背中を追いながら、淡々とそう感じていた。
 夫が溝蓋を戻し、家の中へ戻る頃には、血が止まっていた。止血のためのバンドエイドを外し、消毒して、もげたところを元に戻し、キズパワーパッドで覆った。これは優れものだと思う。貼りっぱなしで、自然治癒力で治す。もう何回か実証済みである。固定の意味で上からバンドエイドも回しておいた。
 服を着替えて、飛んだ血飛沫の始末をした後、有り合わせのものでお昼にした。
 

竹落葉地域交流カフェ開く
緑陰に一休みする庭弄り
侵入の定家葛に藤絡み
青空と見上げて飽きぬ柿若葉
犬はもう飼はぬ庭には牡丹咲く
溝蓋のズシン血飛沫白き服
青芝に血を滴らせ夫呼ぶ
づきづきと左手清和の天を指す
二人して今日の仕事の溝浚へ
麻服に着替へ指には傷テープ