倉吉


     倉吉
          三朝温泉
                                        十河 智
秋寒し通勤電車に迷ひ込む
約束の十月の旅もう一年
秋晴れてスーパーはくと三号車
秋の雲それぞれ三都より乗りて
秋冷にあつたかコーヒー缶求め
対面に座席設ふ秋の声
秋気澄む空きし車内に集金す
鬼太郎の電車より子等山の秋
鄙の駅梨の大きく実る木よ
天高しまづ交番の白き壁
秋深しガイド兼ねたる運転手
倉吉は落ち着き払ひ蔦葛
ケンタッキー・スーパーマルイ黄葉して
けやき黄葉白壁通赤瓦
皇太子行啓の宿紅葉山
投げ入れし寺と言はれて山装ふ
秋冷や風に忘れし物ありと
耳つんと智頭急行線山紅葉
杉山にまこと紅葉の裾模様
踏切のある里の秋汽笛鳴る
山里に赤瓦散る秋時雨
水澄めり砂丘の砂の出処かな
郡家(こうげ)・智頭(ちず)秋雨に濡れ駅名板
日本海より山陽へ秋暮るる
まづ神戸一人降り行き銀杏散る