水郷 潮来・佐原

水郷 潮来・佐原
         2015年6月12・13日
                             十河 智

 一
水郷へ梅雨寒の日の午前五時
五月雨るる七時二十六分発「のぞみ」
むしむしと暑き東京八重洲
仕事人みな足早にクールビズ
バス停に軽装白靴にて来たり

 二
土地勘の無き高速道梅雨曇
冷茶にて呑み込んでをり握り飯
潮来あやめ祭りに人が寄り
荷を預けチェックインまでまずあやめ
雨の日のけふが一番花菖蒲

 三
教はりし見分け方ありあやめ咲く
藤棚の藤の莢より雫垂る
歌碑のある船着き場より船遊び
水郷は低き堤や田水引く
利根川の風が涼しき櫓漕ぎ舟
川岸に真菰一叢潮来かな
橋日陰娘船頭歌ふなり
夏の川潮来の伊太郎花嫁さん
金婚も近き夫婦や氷菓
あやめ祭り全景を見る橋の上

 四
らうらうと夏鴬や長勝寺
鳥たちの集ふ大樹や梅雨晴間
菩提樹の花降り散りて夏の蝶
傍らでガイドする人木下闇
更に奥あるらしけれど油照
夏の夕また汽車で行く元気者
夏料理京大阪の人の口
老いと酔ひ述べても夏の夜の夢か
二駅のローカル線旅夏の朝
燕の子鹿島神宮よりバスに

 五
千葉佐原茨城潮来あやめかな
忠敬の健脚想ふ夏館
忠敬にありし隠居後夏の旅
伊能家の十七代目額紫陽花
青柿や忠敬住居書院跡
河骨や小さき花を見つけたり
夏の日や中村屋角また通る
意外にもうまきうどん屋夏の昼
ぢゃあぢゃあと橋より落とす水涼し
日盛を万歩も歩き駅の椅子

 六
バス待てば青葉風来る佐原駅
最後まで切符の手配玉の汗
缶ビール酒お菓子みな分配す
高速道約九十分昼寝かな
まずコーヒー東京駅の蒸し暑き