友人宅訪問と鴨川散策

友人宅訪問と鴨川散策
        2017/10/11
        十河智

 高校時代の女友達がまた集まった。京都吉田神社近くに住む友人が、いつも作る中華ちまきに自信あるから、ご馳走してくれると言う。お天気がよかったら、みんなで鴨川散策して、出町柳まで行こう、その辺でお茶して終わりにしよう。そう言って、家に招いてくれた。
 よく晴れた少し暑いが、風が秋を感じさせる日になった。出町柳で待ち合わせ、手みやげに買ってきてもらった蒲萄と、駅で調達のビールを、参加者で割り勘して、家に向かった。
 呼んでくれた友人は、二年前に、大病をした。つい最近の検査で、再発もなく、もとの生活にもどっている。彼女は医師としても週四日仕事に復帰、料理もして、もてなせることが嬉しいと言うのだ。中華ちまきは竹皮で包んだ、本格的なもので、家族一同の集まる時のごちそうなのだそうだ。慣れているから、手間ではないと言う。煮物と鰹の叩きもあり、ごちそうだった。着物のリフォームした服を着ている人や、自動停止装置のついた車に買い換えた人が、話の中心になった。古い友人たちの家族の消息も知っている人が、教えてくれた。窓際に虎猫のかわいい写真がおいてあった。この前集まったとき、家の前で車に轢かれて死んでしまったと、哭いていた、猫の遺影だった。ここでも猫は家族として大切にされていた。京大病院の調剤ミスも、話題になった。二時間ほどで、さっと洗い物もして、皆で鴨川散策にでた。東大路まで歩く。私のゆっくりに皆を付き合わせたが、近衛通りは、私には懐かしい。麻雀をするESSの男の先輩が、入り浸る雀荘の近くの喫茶店が、構えそのままで建物だけ残っていたりする。京大や公的施設も、植え込みのある外構が鬱蒼と暗く、木賊や露草、桔梗、色々な秋の草が植えたのか、生えているのか、歩くと楽しい。近衛通りのバス停でバスに乗り、昔の東一条に停留所はなく、京大正門前と、少し北に移動し名前が変わっていることに気づく。京阪も駅名が変わっているし、京都も、だんだんわからなくなる感じがした。鴨川辺りを下鴨神社の方へ歩き、出町橋のたもとの川原で、石を跳び跳びする子供たちや鴨や大鷺などの鳥たちのようすを眺めた。元気な一人が、飛び石に挑戦。リュックも日傘も人に預けて。戻ってきたときの笑顔が少女のようだった。姉と弟、五才前後の二人も裸足で、一つずつ石を飛び越えてこちらへ来た。最後の跳躍に成功すると、私たちは自然に拍手、子供たちはそのまま草むらの方へ、後を追う母親が会釈して行く
 すぐの階段を上ると、わたしがよく行く喫茶MAKI がある。ほぼ満席で、他へ行こうとすると、追いかけてきて、席が空いたと言う。お茶をして、河原町通りの方へ出た。誰かが、ふたばの豆もちを買いたいらしい。が、今日は並んでいない。休業日だった。そこから、また出町柳駅の方へ、風景の中のいろいろ、木々や鳥たち、音を楽しんで橋を渡った。呼んでくれた友達はここでバス停へと別れていった。京阪特急に乗り、それぞれの駅で一人ずつ降りていった。私は、歩いた疲れを、寝屋川の駅で、感じている。今日もいい吟行であった。

ほのぼのと雲浮く空や小鳥来る
色鳥や河面に土手に電線に
澄む秋や出町柳に集合し
中華ちまき呼ばれお持たせなる蒲萄
事故死せる猫の遺影に秋思かな
秋の昼鴨川辺りを歩きませう
秋の午後昔たむろすこの喫茶
八千草の続く植え込み暗きかな
爽やかや京大正門前バス停
サックスは橋の下より鳶鳴く
秋冷の兆し鴨川亀の石
秋晴れや石跳び渡る裸足の子
跳躍の幼き決意穂絮飛ぶ
跳ぶ着地拍手に走り草の花
七十の童心石を飛ぶ芒
初鴨や川の浅瀬に身を休め
カフェに行く階段秋の川原より
秋日傘席立つ度の忘れ物
白式部たわわ絵手紙描く人よ
小鳥来るそこここ赤きピラカンサ
このやうに大木となり金木犀
川原へと紫の実はヤマゴボウ
あっさりと手を振る別れ秋の駅