行きはよいよい、帰りは怖い。

 行きはよいよい、帰りは怖い。
         2017/8/24
         十河智

 今日も、天候不順のせいか、本調子とは言えなかったが、お昼は羽曳野の自分の気に入った明るい雰囲気のカフェにドライブしようというので、出かけることにした。
 正午ごろ、雲は多かったが、青空も見えていた。少し風はあり、道端の草も、もう実の付きかけた稲も、心地よく揺れていた。小一時間ほどのドライブで、目的のカフェに到着。主人の好みの、ガラス面の大きく広い店内の明るいテーブル、柔らかい布か革貼りのソファであれば尚よい、そういう設えの店である。ただ、周囲は田んぼ、中に荻に占領された一枚二枚もあり、同じ駐車場を使う焼き肉店などもある、気軽なカフェである。前に一度、もっと南の河内長野に行こうとして、ここでいいかと、たまたま立ち寄ったところである。
 テーブルが四卓ある一隅に案内され、注文を終えた頃、隣に大学生らしき四人が陣取った。聴くともなくそんな時聞く隣の話はおもしろい。女の子を誘った話、デートの仔細、他愛なくて、若いことがキラキラしている。健康そうな日に焼けた男の子達であった。多分間食と思うが、フレンチトーストを四人でフォークとナイフで食べていた。どこがどう違うとはっきり言えるのではないが、この食べる姿は、少々イメージが女の子っぽくて、日焼けの男子力とのギャップが気になった。彼等が先に抜けて、またその一角が私たちだけになった。何せ田んぼの隣のカフェである。それから蠅が一匹飛んできて、窓際でしばらく相客になった。少しの時間、お互い持っている本に眼を通し、珈琲も飲み終えて、ゆっくりしたところで帰ろうか、となった。三時頃、雨は気配もなかった。
 車に乗って、羽曳野から寝屋川の方へ向かってみると、明らかに雨雲が覆い被さっていた。まだ雨は降っていないのだが。途中、救急車が曲がった脇道で止まっていた。そこへバイクで警官が来た。助手席から一見しただけなのだが、額から血をだして、人が倒れていた。交通事故のようだった。また途中、四五人の人がお地蔵さんのお社の前で何かの相談事。今日は地蔵盆かと思う。擦り抜けた色々なことを考えているうちに、買い物をするスーパーに着いた。十分ほど買い物をして、スーパーを出ようとしたとき、突然の稲光と驟雨、駐車場から出ることができず、収まるまで待とうとしたがなかなか小降りにならない。少し道路が冠水気味のところをゆっくり帰った。マンホールの蓋が浮き、噴水のよう、造成中の土地の土を含んだ茶色の雨水はどっどっと坂を流れ落ちて来る。やっとのことで家に帰れた。五時半。
 おかしすぎる。六時頃にはもう小止み。ニュースによると、雷で京阪電車がストップしたという。ずぶ濡れの中学生がいた。事故のことや地蔵盆のこと、微かだが雨にあってないかと気にしていたりする。

秋の田の色帯び始むティータイム
荻原や人の手離れたる田畑
日焼けして男子が四人女子談義
秋の蠅一人寂しく窓際で
雷のをりさうな雲古墳群
えのころや人の倒れる曲がり角
夕立雲事故に警官救急車
地蔵盆雲行きを観る大人たち
立往生大雨の中稲光
秋出水マンホールより噴き上がる
地蔵盆驟雨に惑ふ子供たち
からうじて濡れず帰り来秋驟雨