小四の夏、大冒険

 小四の夏、大冒険
      2017/7/30
      十河智

 娘が電話してきた。帰省の予定など話した後、自分達が用事があるので、孫二人で新幹線に乗せ、名古屋の従兄姉たちに会いに行かせることにしたという。
 静岡駅のホームまで連れていき、名古屋駅のホームに義姉がその子供たちと迎えに来るという、たった四十分間の子供二人旅。去年は同じ様に大阪に来たがったが、親がさせられなかった。心配そうだが、家で留守番させるよりはと、やらせることにしたらしい。成長した孫たち。小学四年生と一年生。従兄たちと水族館で遊んで、夕方に父親が新幹線で迎えにいく。従兄姉たちと皆で夕食を食べて、静岡に帰ってくる、そんな半日の旅。
 男の子は電車が好きだ。何冊も乗り物の絵本を買ってやった。住んだことのある沖縄にも静岡にも、お出かけに電車があまり使われない。だから大阪でおばあちゃんと映画に行くとき、モノレールや京阪電車に乗っていけるととても喜ぶ。近所にイオンモールができて、車で直ぐだと言うとがっかりするような子達だ。心踊る大冒険に違いない。
 「初めてのお使い」という番組があるが、娘も、子供をバスに一人で乗せて、スイミングに遣ったとき、後を追って受け付けに確認に行ったという。母親も一大決心だろうなと思う。
 決行日、お昼頃、父親が乗せると聞いていたので、無事だけ確認したくてメール。「無事?」「無事名古屋」、無事を確認。
 夜、こちらも出先で夏三日月を眺めつつ、バス停でスマホを見ていると、父親のフェイスブックに、自ら切符を買い、新幹線に乗り込む兄弟のピースサイン姿がUP されていた。そして一番最後は、ゆっくりと我が子を迎えにいく父親の四十分の楽しみ、缶ビールとスルメが撮されていて、みんなに幸せな計画が終了したのだった。

夏休み新幹線のホームトゥホーム
弟と二人麦茶と駅弁と
子燕やこども切符にピースサイン
大丈夫小四の夏大冒険
心配は旅の昼寝や新幹線
夏三日月無事確認の送受信