鰻パーティ、一件落着

鰻パーティ、一件落着
        2017/7/27
        十河智

六月末に突然友人からメール、
 「自宅で鰻パーティするから、何時何時は都合どう?あの人、この人、誘って、来てちょうだい。」
指定の七月第一週火曜日か木曜日は、両方とも、たまにしかやらない仕事が入っていて、都合が悪かった。雨が降れば、次の週に予定が移る。予定は、うまくいけば、第二週の火曜日か木曜日に行けるが、第一週に晴れて、予定が消化できる木曜日でないと確定しないと返事する。
「あなたが来ないのなら、一週間待つ」その友人と一番近いのは確かに私、しかし、私抜きでもいいのにと思いつつ、招集係なのかとも思ったり。彼女もこの二年間病気と戦い、漸くもとの暮らしに戻っていた。今も週四日、医師として勤務している。誘ってくれるのは、めずらしいし、嬉しいこと。そう思って、招集係となった。
 うまく晴れが重なり、パーティができることになる。高校の大阪在住女子九人、いつもの旅の仲間に一斉メールで招集を掛ける。一人を除いて、火曜日がいいと返事があり、また、「火曜日、出町柳駅、11時30分集合」と一斉に返信メール。友人は吉田山の麓に住んでいる。これだけの人数集まったと友人に電話した。「そんなに大勢」、と驚かれてしまった。「皆、暇なんやね。」こちらが、驚きだった。この友人は、今まで仕事一辺倒、最近旅にも参加するようになった。「うちにそんなにたくさん集まれるだろうか、鰻足りるだろうか」、という。私は、かつてやっていた店舗の二階の十二畳ほどのワンルームで六人集まるお好み焼きパーティをいつもやっているので、なにも思わず、旅の全メンバーに声を掛けた。彼女の家のキャパシティに何の不安も持たなかった。今更、できないなんて言えない、と心うちで叫びながら、「充分広いし、鰻は切って分け合ったらいいし。皆来るって、喜んでくれているし。片付けは、みんな主婦だから」と必死で説得。パーティが実現することになった。私は、頼まれて、お漬物とビールを途中で買って行く。メンバーの一人にお菓子を買ってくる様頼んだ。友人が鰻は私の方で用意するからというので、持っていくものをお呼ばれされた方の割勘にした。気心しれたもの同士、その辺はすんなり通る。
 件の日、私は三条駅中で、土産品の漬物と佃煮詰め合わせ、二つ買って、出町柳へ。出町柳駅には、都合の悪いはずの人も来ていて、全員集合。「だって会いたいもん」、そうだ、それが友達だ。売店のビールを買い占める。
 案ずるより産むが易し。私の予想通り、皆よく動き、よく喋った。親の話も、自分の話も、病気と老いのことばかり。主の友人は、仕事に繋がり、病後の身にきつかったのか、話題を変えようと言った。家庭菜園の収穫物を持ってきた人がそれを分け始めた。爪楊枝入れはうちからあげた主人作。ケーキを取りだし、お茶になった。茶器とフォークを見ている人が、mikimotoのロゴと米粒より小さい真珠を見つけて、話題にした。他愛もない話。時計は午後四時。
 神戸や大阪から集まっている。帰る用意をし始めた時、夕立がきた。
 

メールひとつ鰻パーティ女子十人
まず乾杯ビールつまみも駅で買ひ
半切りに十人前の鰻飯
菜園の朝採り胡瓜浅漬けで
手際よく片付けてをり溽暑かな
古希の夏病話はもう止めよ
楊枝入れ夫の贈りし陶作品
冷蔵庫ケーキ十個の整列し
mikimotoと刻むフォークや冷トマト
夏野菜分けて一本一個ずつ
夕立や暇を告げて出てみれば