災難

災難
       2017/5/5
       十河智 
郵便を出しにいくとき、銀行へ用事があるとき、コンビニへはバーコードのついた税金やお取り寄せの料金支払いなど、またはママ友から繋がった女友達のおしゃべり時間潰しのサンマルクカフェや、そのついでの買い物など、案外駅の方へ向かうことは多い。
 坂のある自宅から車かバスで、5年前までやっていた薬局のシャッターを下ろした店舗まで行き、そこから駅前は小回りが効き、駐車のめんどうくささのない自転車でちょこちょこ出掛けている。自転車はシャッターを下ろしたままの店先に鍵を抜いて置きっぱなしであるが、これまでなんにも起こったことがなかった。ほぼ毎日、気分転換で一人になりたい夫婦の片方が行って窓を開ける。店こそ閉まっているが、空き家とは思われないだろう。
 しかし、近所にある自販機が灯りとなる頃、何故かたむろする若者が出てくる。夜は誰もいない建物なので、前の駐車スペースがいい具合に談笑場なのだ。
 自動車税の納入通知がきた。そのために自転車の出動と、前輪だけ空気を確認、鍵をいれて、いざ出発と動かした途端、後輪がヘナッと異常なのに気づいた。道路で止めて、点検すると、後輪のタイヤに輪に沿って10センチ程の切り裂きを見つけた。前回乗ってから、一週間、自転車屋の前を通れば必ず空気をいれる。疑いたくはないが、酷い悪戯をされたと思ってしまう。
 駅まで、自転車屋まで、頑張って、押していくしかなく、帰りは乗って帰れると期待して、バスの通る細い道、外環状という幹線道路の都合八車線ある横断歩道、一本道だが、大学、高校、中学、小学校、全部通学路になっている郵便局から駅までの歩道、連休の一日でよかった、夕方だったが、人通りは少なかった。連休の一日で、運がなかった。自転車屋が休業していた。張り紙にどれだけがっかりしたことか。折角歩いてきた駅前、銀行でお金を下ろし、コンビニで税金を払った。また、来た道を、自転車を押して帰った。気づいたことがある。自転車を押して歩く方が、足がスムーズに運ぶのだ。膝を曲げて、歩を進めるのも楽で、案外疲れずに帰ることができた。今度の伊豆行きの旅には杖を持って行こう、そう考えているうちに帰っていた。
 勿論、それから後は、シャッターを開けて、店舗の中に自転車を仕舞い込んでいる。
 
自転車のタイヤに異変下萌えす
悪行は誰の仕業か四月尽
ゴールデンウィーク小さき紙片の休業告知
税金を払ふコンビニ夏兆す
日脚伸ぶパンク自転車押し帰る