春の草抜き

春の草抜き
     2017/4/25
十河智

この春は気候が不安定、雨が続く肌寒さと、夏日に近い暑さが入り交じり、草の芽の伸びも、いつもの年より早い気がします。二日掛けて草抜きをしました。土は適度に柔らかく、若草なので、捗りました。目につく玄関回りとタイル張りの目地、花壇と芝生、蔓延るもの、出ているものを抜き続け、いつのまにか日暮れと言う二日間でした。主人は全く草や泥に触れない人です。今は私も年を取り、体力的に食事の支度まで行かなくなり、そちらを主人に任せます。お好み焼きと鮭を焼いてお茶漬け、その程度ですが。
 草を抜いていると、忘れかけた草の名を思い出したり、虫も色々出てきます。楽しみも多い作業です。今は道具を使いません。感触が楽しいのです。力を込めて抜いたあとのやった感じ、たまらなく嬉しいのです。でも膝の曲げられなくなった老いの身、地べたに足を投げ出し、にじりながら移動します。こんなときにも、いつまでこの生活を続けられるかな、と一抹の不安が過ります。
 全て終わったあと、ただ一人の庭の芝生の夕暮れにちょっと仰向けに寝て延びをしました。柿若葉が街灯に名園のライトアップのように映えていました。空には少し暗い青空に綿雲がびっしり、異なる白が魅力的な夕景でした。

春の草取よき道具なる指十本
カラスノエンドウ一絡げして抜く一気
ものの芽のうじやうじやありぬ一つずつ
あちこちの雀隠れも皆壊す
若草の三袋分やすっきりす
暮れかぬる空には雲の綿詰みて
夕闇にほんはり白し柿若葉
春の芝つんつんつつく仰臥の背
駒返る草の仇討ちじんましん
春暑し両腕紅く発疹す