実むらさき

実むらさき
  同窓会髪を染めける秋日和
  鰯雲リバーサイドホテルへと
  菊の賀に競ふ衣装や姫人形
  光君舞ふ姿置く秋の色
 秋晴るるいざ清水へ繰りださむ
  現世ぞ紅葉に早き成就院
 こぼれ萩その色一つ古寺の庭
 松手入れ待たるる鶴と言ひがたく
 東山連峰を背に天高し
 清水の舞台の由来秋の滝
 秋出水始末してをり工事札
 七味屋の角に待ちけり秋暑し
 馬肥ゆる氏名を声に探りけり
 厳選の京懐石や菊なます
 稲光転機迎へる人多く
 賀茂川原浮かれてをれば驟雨来る
 橋の下穴まどひして住みてをり
 秋灯やぬれし滴を拭ひけり
 長き夜や早々と退きゐねにけり
 秋冷となりし河原を語らひて
 坂鳥や大学巡る道重し
 十月や百万遍はひっそりと
 稲雀進々堂をにぎはしぬ
 かたはらに若き学徒やひやひやと
 秋の蚊や古テーブルを叩きけり
 実むらさき物思はざる昔あり
 北山に新京都あり花白粉
 秋の峰安藤忠夫作の棟
 水澄むや睡蓮哀しく描かれたる
 奏で出づ旋律若き秋の街
 秋光やアールグレイとこだはりぬ
 さはやかや店の自慢のモンブラン
 打ち上げは釣瓶落としの後として