初桜
平成一二年三月一八・一九日
春日輪落ち入る様を見尽くしぬ
百年の橋七色に春灯し
朧夜や物語する三人女
ひたぶるに松波低し春の海
若芝や明治は遠くりりしげに
花博の初日に合はせもの芽かな
駒返る草よ始まり始まりと
空調の下ひともとの初桜
春愁や夢舞台まで遠かりし
春寒しハーブ茶の色生き生きと
つくし椀まこと微かに香を含む
ありありと震災とどめ彼岸かな
春の野や野島断層納めてし
地割れせし旧居のテラス春時雨る
断層が天意貫く春の雨
須磨舞子朧谷坂くぐり抜け
春昼の街のにぎはひ雨へ逃ぐ
春の夢歌出そびれて萎えしまま
歌ひけり心模様に花吹雪