広島県福山市鞆の浦

広島県福山市鞆の浦広島県福山市鞆の浦
        2018/11/04
        十河智

 10月の最終の月火の関西在住高校女子会一泊旅行、今年は広島県福山市鞆の浦であった。メンバー9人、一人が欠席で、8人が、座席指定の新幹線に関西の三都から乗り込む。目的地で、ご馳走と温泉とお喋りをし尽くして、また一年後、という簡単旅行を、かれこれ十幾年続けている。間にも数回会うのだが、これが一番楽しい。
 福山城は駅の真ん前、送迎バスの待つ間にちょこっと見物。大木のクロガネモチの赤い実が城を飾っている。
 問わず語りに、身辺のこと、友人たちの消息、今年はスマホとラインがいつのまにかテーマになっていて、声の検索やラインのグループ作りを教え合い、来年からはラインで連絡、ということになった。
 実のところクロガネモチがわからずに、あとで検索して知ったのだった。
 鞆の浦は、バスに満席ほどの観光客をピストン輸送しながらも、静かに受け入れて、穏やかに過ごせるいいところだった。夜は、温泉と料理長おすすめの鯛会席。その後お喋りをしたかったが、隣からこない。四人だけで、早めに寝てしまった。
 朝も、岩のりや鱚のみりん干し、鯛ちくわ、その他お土産になりそうなご飯のお供満載であった。
隣室ではスマホ初心者ばかりで、なんやかやと情報交換していたらしい。知らない間に夜更けになったという。
 ロビーでコーヒーのあと、市内を散策するのだが、まず向かいの仙酔島へ市営の渡し船に乗っていった。
 観光案内の散らしに食事どころと名所旧跡、クーポン券もついている。私でも皆と歩ききれるくらいの港町で、お寺は迫り来る山にあり、健脚な人は登って参拝していた。島には遠足の幼稚園児も来ていて、九千万年前の断層を見たと感動する友人たち。私は、浜で、鷺や鴎、鳶、漣に浮く海月。俳句を作って待っていて、退屈はしなかった。
 二時頃にまたほぼ満席のバスで福山駅に送ってもらった。夕方には大阪、あまり疲れない、旅なんだろうかこれは、という旅であった。



秋の昼駅の千成瓢箪
三都より乗り込み秋を楽しみに
秋気澄む椅子を回して四人づつ



福山城石垣聳え秋寒し
タコ飯の壺の重きや城の秋
赤き実の城へと誘ふ公園に
赤き実の名を問ひかけるスマホかな
赤き実はクロガネモチと唱へ
つつ



満席の送迎バスや秋の潮
秋灯す渡り廊下の果の部屋
冷やかに触れて造花と知りにけり
鞆の浦鯛づくし膳まつたけと
長き夜やスマホ始めはラインから
露天風呂朝寒のなか突き抜けて



起き抜けの炙る鰯のみりん干し
朝寒や漁船を繋ぐ防波堤
秋うらら島への五分の渡船
秋の潮ドドォーと桟橋船に揺れ
仙酔島港に園児の秋の声
晩秋の浦に青鷺勇ましく
天高し山端に鳶の三羽かな
崩れ痕剥き出しの根も島の秋
切通し抜けて広がる秋の海
健脚や九千万年前断層



秋惜しむ浦の渡船と石畳
クーポンの使へる店や秋の蝿
ぶらタモリよろしくそぞろ寒き町
鞆町鞆小鳥神社に小鳥来る
ピーヒョロと胸元掬ふ秋の鳶
秋深し自転車錆びて置かれゐる
充分に歩き疲れて雛の秋